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150キロ投手大豊作のドラフトだが、
“イチロー”の原石を見逃すな!
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2010/10/27 10:30

「ハンカチ王子」と呼ばれたのも今や昔。早大野球部主将として活躍する斎藤。球威があるとは言えないが、縦横のスライダーとフォークを武器として、ツーシーム、カーブ、チェンジアップなども織り交ぜた頭脳的ピッチングは依然として高評価だ
では一二三に甲子園で投げ勝った島袋の評価は?
一二三とは対照的に映ったのが決勝で東海大相模を倒し、春夏連覇を達成した興南のエース島袋洋奨だ。一定の評価は得ていたものの、偉業を達成した割には評価が分かれていた。それも、やはり「排気量」の問題なのだ。
一二三が身長184cm、体重85kgという立派な体躯の持ち主であるのに対し、島袋は身長173cm、体重68kg。まずは体のハンディがある。
一二三が荒削りでまだ「未完」の印象を残したのに対し、島袋は高校の段階では心身ともにひとまず「完成」に達していたように“見えた”。冒頭のスカウトの話ではないが、伸びしろという部分で島袋に疑問符をつけるスカウトもいたのだ。そんな評価も遠因にあったのか、結局、島袋は中央大学への進学を決めた。
イチローが語る「何か持ってる」選手とは?
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だが、そんな「排気量至上主義」とはまったく逆の見方がある。
イチローがこんな話をしているのだ。
「体、体っていうけど、体があって、力を出せない選手なんてプロではナンボでもいるじゃないですか。どうして、小さい体でも大きな体の選手に負けないぐらい力を出せる選手をもっと評価しないんでしょうね。そっちの方が絶対、何か持っていると思うけどなあ」
イチローは高校時代、「非力」ということでオリックスから4位という評価しか得られなかった。おそらくは、当時の自分のことも重ね合わせての発言だったのだろう。
確かにイチローのような例もある。ただ、彼のような才能は、おそらくは3000㏄や4000㏄の選手を見つけるよりもはるかに難しいことだし、指名するとなればリスクもともなうものなのだ。だから、なかなか上位候補に名前が挙がることはない。
“小排気量”でも異常な力を発揮する選手はいるのか?
ところが、今年のドラフトでは、実はそんな才能を秘めているかもしれない選手が1位候補に挙がっている。
どういう機会にイチローが「小さくても何か持っている選手」の話をしたのかというと、斎藤が高校時代、やはりプロのスカウトからさほど評価されていなかったという話題になったときだったのだ。
斎藤は身長175cm、75kgと決して体に恵まれている方ではない。にもかかわらず150キロを記録した。このことは、小さな身体でも十分な「排気量」を持てることを証明しているのではないだろうか? もしくはそれ以上の「何か」を。
どこまで論じていっても人は車にはならない。ドラフトの歴史が何よりも雄弁に物語っているように、人を見極める作業はなかなかマニュアル化はできないものなのだ。
豊作か否か――。
本当の意味でそれがわかるのは、数年後である。
