日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
ザックがアルゼンチンに仕掛けた罠。
“岡田ジャパン+α”で韓国にも勝つ!
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2010/10/12 12:00
岡田ジャパンからの漸進的改革を図るザッケローニ。
ザッケローニという指揮官が、急進的な改革を好まないこともいいスタートを切れた理由の一つだと筆者は感じている。4日から始まった合宿では、ボールに対して体の向きやポジション取りなど、ゾーンディフェンスに必要な基本を最終ラインの選手に細かく指導していたが、試合になると多くを要求してはいない。
システムも、岡田ジャパンで慣れている4-2-3-1を採用している。
約束事でがんじがらめに縛っていたら、あそこまで選手たちが伸び伸びとはやれなかったに違いない。
漸進的な改革を彼が描いていることはよく分かった。
南アW杯の前に2連敗した時とは異なる新生・日本代表。
さて、次はアウェーの韓国戦である。
岡崎や川島永嗣など離脱者が多いとはいえ、現時点でのベストチームで韓国と対戦することができ、両者の実力差を把握できる絶好のチャンスである。
ライバルの韓国には2010年に入って東アジア選手権では1-3、W杯の壮行試合では0-2と2連敗中だ。
日本の武器であるパスワークを狙われ、韓国のカウンターに手を焼いた。ボール際の戦いでなかなか勝てず、フィジカルの差を痛感させられた2試合だった。
しかし、あのときの日本と今では戦い方が違う。細かいパスワークで主導権を握るスタイルを捨て、ブロックをつくった組織的な守備からカウンターを狙うスタイルに変えてベスト16まで進んだことで、ボール際の強さには自信が芽生え、9月に新しいチームになってからは相手ゴールに縦に速く向かう意識も強くなった。
むしろ韓国がこれまで得意としてきたスタイルに近く、このサッカーでライバルを凌ぐことができればザックジャパンの方向性が、しっかりと見えてくることになる。
会見の席で「韓国戦についてはこれから練っていきたい」とザッケローニは多くを語らなかった。ライバルとの一戦が、親善試合以上の意味をはるかに超え、自身にとっても負けられない戦いであることは彼も分かっている。
来年のアジアカップのためにも日韓戦は負けられない!
改革のためには求心力が必要だ。
ザッケローニはイタリアのトップクラブを率いてきた実績があるとはいえ、優勝経験はACミランで1998年~1999年のシーズンを制した1度だけで、以降は同じクラブで2シーズン以上の指揮を執っていない。それゆえ、その手腕は未知数と言っていい。イビチャ・オシムのように日本でも実績を残してから代表チームを引き受けた立場とは明らかに違う。
勝利は身を助く――。
来年1月には最初の勝負どころとなるアジアカップが待っている。アルゼンチン、韓国相手に勝つことは、ザッケローニが描く漸進的な改革を必ずや促進させる力となる。
アルゼンチン戦以上に勝負にこだわるザッケローニの姿を見たいものである。