プレミアリーグの時間BACK NUMBER
勝っても勝っても評価されない、
マンC、マンチーニ監督の憂鬱。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2010/10/15 10:30
インテルではセリエA3連覇したものの、なかなかCLでは好成績が残せず、結局チームを去ったマンチーニ。マンCではどのような結末が待ち受けるのか…。
プレミアリーグでの戦績は、10月3日の7節を終えて4勝1敗2引分け。失点は僅か3点。順位は首位に4ポイント差の2位。マンチェスター・シティは、CL出場権獲得(4位以内)の目標に向けて上々のスタートを切った。
にもかかわらず、チームを率いるロベルト・マンチーニに対する評価は芳しくない。
相変わらず、と付け加えるべきかもしれない。45歳のイタリア人監督には、昨年12月の就任直後から解雇の噂が絶えないのだから。マンチーニがシティと結んだ契約の中に、トップ4入りを実現できなければクラブによる途中解雇を認める条件が盛り込まれていることは有名だ。土壇場での4位争いに敗れて5位ということで、ぎりぎりのところで昨季末の解雇は免れたが、夏の移籍市場に100億円台の資金を投じて補強が進んだ今季は、4位以内が絶望的と判断された時点で即座に首が飛ぶと見られている。
勝てば選手のおかげ。負けたらマンチーニのせいに?
マンチーニは「金満クラブの雇われ監督は短命に終わる」と世間に決めてかかられ、初めからまともな評価の対象にされていない節すらある。
たとえば、トットナムとの開幕戦(0-0)。マンチーニが、ガレス・バリー、ナイジェル・デヨング、ヤヤ・トゥーレを4-3-3の中盤に並べると、メディアは早速「守備的」とネガティブなレッテルを貼った。実際には、「壊し屋」タイプのデヨング以外はカウンターにも絡む攻守両用だ。しかし、『ガーディアン』紙が「中盤の守備要員を一斉に起用した」と報じたように、まるでガチガチの“トリプル・ボランチ”のように扱われた。
トットナム戦での無得点は、むしろ3トップに問題があった。中央のカルロス・テベスと左のダビド・シルバが共にボールを求めて下がり気味になり、最前線での脅威が低下してしまったのだ。するとマンチーニは、続くリバプール戦(3-0)でテベスを1トップとする4-2-3-1にシステムを変更して対処してみせた。だが、スポットライトを浴びたのは、シティでのデビュー戦で2得点に絡んだジェームズ・ミルナー。指揮官の学習能力ではなく、移籍金約35億円の新戦力が勝因として挙げられる結果となった。
指揮官の冴えた戦術もマスコミは評価せず。
開幕から驚異的な得点力と堅守で5連勝(21得点1失点)を飾っていたチェルシーに、今季初黒星をつけた6節の勝利(1-0)などは、監督がマンチーニでなければ「戦術の勝利」と讃えられていたのではないだろうか?
果敢なプレスを貫いたシティは、首位を走る敵にプレーをさせなかった。怪我により左SBが不在だったが、予想されたMFバリーの起用ではなく、本職は右SBのパブロ・サバレタを逆サイドに回し、右には19歳のCBデドリク・ボヤタを抜擢する思い切った策で対応した。バリーは定位置の中盤で、サバレタとボヤタは不慣れな左右の後方から、それぞれ勝利に貢献する活躍を見せたのだから、マンチーニのギャンブルが当たったことになる。ところが翌朝の各紙の見出しは、カウンターから決勝ゴールを奪ったテベス一色となった。