野球善哉BACK NUMBER
もう「谷間世代」とは呼ばせない!!
“T-岡田世代”が大注目の理由。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byShigeki Yamamoto
posted2010/09/15 12:43
ヤクルトのV字回復を支える川端は横浜の山口を意識。
小川監督代行の就任で起用が増えたヤクルト川端は、チームのV字回復を後押しした選手の一人と目されている。
開幕前は、今年から始まった女子プロ野球に彼の妹が入団したということで、ちょっとした話題にもなったが、走・攻・守三拍子がそろった大型内野手として、さらにはポスト宮本の一番手として期待が高い。
「僕はそんなに同世代に意識ないんですよね。チームには同級生の荒木(貴裕)が大学から入ってきましたけど、それも、そんなに意識はないです。ただ、他球団でいえば、横浜の山口俊が高校の時から仲が良いんで、そういった意味で(同級生である彼を)意識しています。でもあいつの球、打てないんですよ。まだ一度も打ったことがない」
その山口俊はというと、同世代のライバルを意識するというより、むしろ谷間世代と呼ばれる自分たちの置かれた状況に、強い危機感を募らせていた。
「僕らの一個上、一個下の代はすごく頑張っているんで、挟まれた僕らの年代をもっと盛り上げないといけないと思います。プロの中で見ても僕らの世代は少ないですからね。僕自身としては、やっと一軍に定着して投げられるようになったんで、同世代を引っ張っていけるように盛り上げていきたいと思っています」
9月14日の阪神戦ではクローザーを務め、しっかりと試合を締めてみせた。昨季を上回る25Sは阪神・藤川球児を現時点(9月14日)で上回っている。阪神と横浜のチーム力の差を考えると、その数字以上に評価されていい成績である。
谷間世代の象徴的チーム、阪神タイガース。
阪神はこの世代が切磋琢磨している興味深いチームである。山口俊からプロ初本塁打を放つも「チームメイトは刺激になるけど、他チームの同世代は意識しない」という藤川俊介らを擁している。
今シーズン、7月には藤川俊以外に、投手の藤原正典、鶴直人、若竹竜士、野手の大和、田上健一ら実に6人が同時に一軍に登録されていたことがあった。いわば、谷間世代の象徴的チームである。そんな彼らだが、チーム内には良い意味でのライバル関係があるという。一軍登録時の藤原がこんな話をしていた。
「一軍、二軍関係なくめちゃ仲がイイんすよ。ただ仲がいいだけではなくて、練習の中では参考になることもたくさんあって。たとえば、僕は今年入団ですけど、鶴や若竹とかは高校卒業で入っていて、練習での過ごし方とか先輩との接し方とかがもう参考になるんです。その一方で勝負となると、鶴は先発を外れ中継ぎをやっていて、もう一度先発を狙っている立場でしたからね。そういう鶴を見ながら、自分は中継ぎとして負けてられないっていうのもありましたからね」
藤原は肩を痛めて二軍に落ちてしまったが、チーム内での良いライバル関係が切磋琢磨を生み、若手の育成が他球団よりも遅れ気味の阪神の中にあって、珍しく勢いのある世代となっているのだ。特に、藤川俊はプロ初本塁打を放って以降、レギュラーに近い形での起用が続いている。