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<成功する移籍の4条件> 欧州のクラブは日本人のどこを見ているのか。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2010/09/03 06:00
かつてこれほどJリーグと欧州の距離が縮まったことはなかっただろう。今夏、香川真司と内田篤人がドイツへ、長友佑都がイタリアへ旅立ち、主な1部リーグでプレーする「欧州組」は10人以上に膨れ上がった。
とはいえ、Jリーグで目立てば、誰でも移籍できるというわけではない。欧州のクラブに「買われる」ための条件は、いったい何だろうか?
「大前提として、武器を持っていなければいけません」
そう断言するのは、今季ホッフェンハイムのスポーツディレクターに就任したタナー氏だ。彼は昨季まで1860ミュンヘンの下部組織を率い、次々にタレントを生み出した育成のプロだ。
「私は1860時代、まず子供たちに武器を身につけさせることをモットーにしていました。スカウトの目にとまる特徴がなければ、誰も獲得しようとしてくれないからです」
当然、これは日本人選手にも当てはまる。リストアップされるには、まず目につく武器がないといけないのだ。
マガト監督が大久保嘉人を怒鳴りつけた理由。
では、この前提をクリアできたとしたら、次にどんな点が鍵になるだろうか。
「基本技術」を重視しているのは、ヴォルフスブルク時代に長谷部誠を鍛え上げ、今季は内田を獲得したマガト監督だ。マガトは日本人の「規律」を高く評価するがゆえに、基本技術に穴があることを問題視している。
ここで選手が右足のアウトサイドでパスを出したシーンを例にしよう。Jリーグなら客席から拍手が起こるかもしれないが、マガトはこういうプレーを許さない。
「なぜ、左足のインサイドできちんと蹴らないんだ! サッカーはサーカスではない。不正確なプレーはするな!」
大久保嘉人は試合でオーバーヘッドやヒールパスをして、マガトに怒鳴りつけられたことがあった。日本では華麗なテクニックがもてはやされる傾向があるが、高いレベルでプレーするには、より完璧な基本技術が求められるのである。
一方、代理人のトーマス・クロート氏は、「アグレッシブさ」を日本人最大の弱点と見ている。クロート氏は高原直泰のハンブルガー移籍を皮切りに、ドイツ1部に来たすべての日本人選手の移籍に関わった敏腕代理人だ。
クロート氏は言う。
「Jリーグと欧州の大きな違いは、局面での激しさ。そこで逃げるような選手は、欧州では通用しません」