リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
攻撃絶好調のアトレティコに
影を落としかねないフラドの放出。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byUniphoto Press
posted2010/09/10 10:30
ホーム開催の開幕戦を4-0で大勝したアトレティコ。フラド(写真左)の活躍が光ったが……
昨季ヨーロッパリーグ(EL)の初代王者となったアトレティコは、リーガ開幕前にはインテルとのUEFAスーパー杯にも勝利し、早くも今季初タイトルを獲得した。さらには8月30日、スポルティング・ヒホンとのリーガ開幕戦も4-0と完勝。9月1日にマドリード市内のネプチューン広場で行なわれたスーパー杯制覇を祝うセレモニーでは、今季の白星発進も手伝って、サポーターは高らかに「俺たちはスーパーチャンピオン!」と歌い続けた。
先の2試合でアトレティコは確かに「スーパーチャンピオン」と言えるほどの凄まじい攻撃力を披露した。フォルラン、アグエロ、レジェス、シモン(またはフラド)の前線4人が完璧に機能した。
この4人のいずれかにボールが回れば、ドリブルでマーカーを引き付け、そこに生まれたスペースを他の3人が突くことで一気に相手守備網を崩してしまう。4人が絶好調のアトレティコ攻撃陣は、中盤の組み立てを必要としないほど、驚異的な破壊力を有している。
守備面でも、ビジャレアルから獲得したゴディンと入団7年目のペレアのCBコンビが存在感を発揮。中盤センターのパウロ・アスンソン、ラウール・ガルシアという2人の“潰し屋”の働きもあり、スーパー杯、開幕戦共に相手の攻撃をシャットアウトした。
開幕早々から攻守に充実するアトレティコに対し、サポーターや地元メディアは「今季こそ」と、15季ぶりのリーグタイトル獲得に向けて、さらなる躍進を期待している。
破壊力は抜群だがワンパターンな攻撃には課題が残る。
しかし、アトレティコがこのまま好調を維持できるとはなかなか思い難い。
なぜなら、リーガ9位で終えた昨季と同様に、攻撃の組み立てがあまりに一本調子すぎるのだ。「勢いに乗って一気呵成に攻める」という以外に、例えば遅攻から急激にペースを上げて相手DFを崩すといった攻撃の選択肢があまりにも少ない。
ELのタイトル獲得、そして開幕戦の大勝により、他チームのアトレティコに対する警戒の度合いはますます高まるだろう。そうして守備を固めた相手に対し、カウンターやセットプレーで足元をすくわれてしまうのがアトレティコというクラブの悪癖でもある。新加入のゴディンは優れたCBではあるが、4バックの最終ラインの連携という点では課題を残しており、悪癖が解消されたとも思えない。