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福島県は「陸上王国」になります!!
県をあげてのスポーツ振興の未来。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2010/08/18 10:30

福島県は「陸上王国」になります!!県をあげてのスポーツ振興の未来。<Number Web> photograph by AFLO

箱根駅伝で東洋大学を2年連続の総合優勝へ導いた「山の神」柏原竜二。今年6月に行われた第94回日本陸上競技選手権大会では男子10000mに出場。自己最高記録を塗り替えられず、13位となった

 福島県で、新たな試みが始まった。「陸上王国福島」を目指し、県をあげての強化に取り組むものだ。

 以前、福島出身の知人から「福島って、いい陸上選手が出るんですよ」と聞かされたことがあった。福島県の陸上と言ってまず思い浮かぶのが、川本和久氏が監督就任後、井村(旧姓池田)久美子、千葉(旧姓丹野)麻美ら多数の日本代表選手を輩出する福島大学陸上部である。

 彼女らにとどまらず、古くは円谷幸吉、近年ではマラソンの伊東(旧姓鈴木)博美、橋本康子、藤田敦史、佐藤敦之。箱根駅伝で活躍した今井正人、昨年と今年に同駅伝で2年連続の激走を見せた東洋大学の柏原竜二らが福島県出身である。そのほかにも、今年1月の全国都道府県対抗駅伝で福島県チームは2位に入るなど、とにかく躍進が目立つのだ。

今年度は指導者の育成に注力し、講習会などを開く予定。

 福島県では以前から、県内の企業、大学、高校の選手を集めて合同練習を行なうなどの試みがなされてきたが、「一過性に終わらせず、より長期的な取り組みを」との県内スポーツ関係者からの提言もあり、今回のプロジェクトが発足したという。

 今年度から、指導者育成を目的に、川本氏が中学校や高校の指導者らを対象とした講習会を3年間開くほか、佐藤、柏原ら県出身選手が随時、県内で指導にあたる。また、福島大には、女子100mの元日本記録保持者、二瓶(旧姓雉子波)秀子氏が「駐在員」として勤務。川本氏の指導方法を学びながら、コーチング理論を県内に広める仕事を担う。

日本のスポーツは、そもそも地域密着で支えられてきた。

 ところで日本では、Jリーグが始まって以来、「地域密着」「地域のスポーツ振興」が声高に語られることが増えたのだが、もともと「スポーツの町」が日本のスポーツの基盤となってきた面がある。何かしらの競技が盛んな地域があちこちにあり、そこで指導を受けた選手が、シニアレベルで活躍するのは珍しいことではなかったのだ。

 夏季競技で言えば、過去に多くの柔道日本代表選手を送り込んだ福岡は、町のあちこちに道場があり、柔道への熱が高いことで有名だ。冬季競技なら、バンクーバー五輪のジャンプ競技に日本代表5名のうち3名を送り込んだ下川町、毎回出身選手が日本代表チームの主体となるカーリングの常呂町などもその名を知られている。

【次ページ】 まずは熱心な指導者と多くの支援者の存在が必要不可欠。

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