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サイ・ヤング賞にはコレが足りない!?
ダルビッシュに課せられたある課題。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2013/05/10 10:30
2年目のレンジャーズで先発ローテーション2番手としてエース級の働きをみせるダルビッシュ有投手。地元メディアからもサイ・ヤング賞候補として、早くも名が挙げられている。
数字からわかる、“三冠王投手”バーランダーのすごさ。
2011年に24勝5敗、防御率2.40、250奪三振で投手三冠王に輝き、サイ・ヤング賞とMVPをダブル受賞したジャスティン・バーランダー投手の全試合の投球回数と球数を表にまとめてみた。
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如何だろうか。34試合に登板し、7イニング以上登板は26試合に達し、しかも完投も4試合記録しているのだ。
その一方で、球数は120球を超えたのは10試合しかなく、5月にはわずか108球で完投している。160キロ近い速球を誇る本格派のバーランダーであっても、効率よく球数を調整しながら長いイニングを投げているのが理解できるはずだ。
そしてこの年のバーランダーは中4日(21回)、中5日(12回)の登板間隔をしっかり守りきり、最後まで投げ続けた。どれだけ中継ぎ投手の負担を軽減する役割を果たしたか容易に想像がつくだろう。
バーランダーの凄さはそれだけではない。
長いシーズンどんな選手でも好不調の波があるものなのに、34試合投げているにもかかわらず最低でも6イニング以上投げ続けているのだ。
サイ・ヤング賞を獲得するために必要な投球とは?
だが、どんな先発投手といえども、登板間隔や交代時期を自分で決めることはできない。
すべての決定権は監督が握っている。
これまでのダルビッシュの起用法も、すべてロン・ワシントン監督の采配によるものだ。
そんな中でも昨シーズン9月にみせたダルビッシュの投球は、5試合中4試合で7イニング以上を投げ、しかも球数も100球未満だったのが2試合もあり、まさにエースと呼ぶに相応しいものだった。
5月5日のレッドソックス戦では14三振を奪い7イニングまで投げたが、球数に関しては自身メジャー最多の127球を要している。
現在のような投球内容を維持しながら、与えられた球数の中で当たり前のように長いイニングを投げるというのは、いかにダルビッシュといえども簡単なことではないということは重々理解している。
だが、サイ・ヤング賞を受賞できるのは毎年リーグでたった1人しかないのだ。
バーランダーを含め、名だたる好投手を凌駕するためにも、あらゆる面でエースとしての資質を高めていかねばならない。ここで指摘する投球回数を伸ばしていくことも、ダルビッシュがサイ・ヤング賞を狙う上で必要不可欠な要素であると断言してもいい。
ダルビッシュの可能性を信じ、彼をサイ・ヤング賞有力候補と考えているからこそ、彼があらゆる面で真のエースとして君臨してくれるその日を待ち侘びたい。