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カタールW杯の影響がJリーグにも!?
欧州サッカー“春秋制”移行論の真相。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2013/05/03 08:01
現役時代はバイエルン・ミュンヘンやレアル・マドリーで主に左サイドバックとして活躍したパウル・ブライトナー。1974年西ドイツW杯で優勝を経験、1982年スペインW杯では主将としてチームを準優勝へと導いた。
伊、西、葡、南米諸国は移行に反対だが……。
UEFAのプラティニ会長やバイエルンのルンメニゲ代表取締役が、カタールW杯の冬開催、およびヨーロッパの春秋制への移行に賛同する姿勢を示している。
ブライトナーは続けた。
「ただし、この決断は簡単ではありません。ヨーロッパの中で賛成している国がある一方で、イタリア、スペイン、ポルトガルは『シーズンの移行は無理だ』と言っています。私自身レアル・マドリーでプレーしていたからわかるんですが、スペインの地域によっては5月下旬に40度を超えることもある。6月、7月にリーグをやるのは難しい。夏休みは必要です」
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南米諸国も反対している、とブライトナーは言う。
「言うまでもなく南米は南半球なので、ヨーロッパが夏のとき、彼らの季節は冬です。アルゼンチンなどヨーロッパと同じリズムでリーグをやっている南米の国は、寒い時期にサッカーをやりたくないと考えている。寒さでスタジアムに来るお客さんが減ってしまうためです。だから彼らもシーズン制の移行に反対しています」
「カタールをリスペクトして、FIFAは決断を下すべき」
では、ブライトナー自身は、どう考えているのだろう?
「自分の意見はありません」と断ってから、この伝説的な左サイドバックはこう答えた。
「すべてはFIFAにかかっています。まずはFIFAがカタールW杯の開催時期を、夏にするのか、冬にするのか、決めなければいけません。これにはUEFAも口出しすべきではない。UEFAの意見が聞き入れられるなら、他の大陸の連盟も意見を言わせろとなるでしょうから。ただし、あえて自分の感想を言えば、ドイツの季節というのは、2つしかない。“緑の冬”(=夏)と“白の冬”です。私は緑の冬にサッカーをしたい。白の冬にやるのは嫌ですね。芝生が緑のときにサッカーをして、白くなったらやめましょうということです」
またブライトナーは、カタールの立場をもっと尊重すべきだと考えていた。
「W杯を冬に開催することに、私は理解を持っています。W杯の歴史を振り返ると、かつてはヨーロッパと南米で交互に開催され、ようやく'94年にアメリカ合衆国で初めて開催されました。2002年には日本と韓国、2010年には南アフリカで開催された。残された地域は、中東とオセアニアの2つだけ。カタールをリスペクトして、FIFAは決断を下すべきだと思います」