欧州CL通信BACK NUMBER
メッシ不在のままバイエルンに完敗。
バルサが直面した「0-7」の現実。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/05/02 11:35
シャビ、イニエスタを交代で下げた後のバルサは完全に覇気を失っていた。写真は彼らの交代後、ミュラーによって3点目を決められたシーン。
カンプノウのメインスタンド最上階にあるプレス席のキャビンに、ざわざわとした衝撃が走った。キックオフまでちょうど1時間となった頃だ。
ラジオの実況、テレビの事前番組のレポーター、デスクと話す新聞記者の声が重なる。彼らは一様に驚きを持ってその事実を伝えていた。
「メッシが先発から外れた。どうやら怪我を再発させたようだ」
驚いたのは彼らだけではなく、バイエルンの選手たちも同じだった。ハビエル・マルティネスは「試合前にメッシが出ないと知って安堵した」と正直に話している。
5月1日、CL準決勝第2レグ。そもそも第1レグでの0-4という結果を覆すのは、ほぼ不可能に近いものだった。しかしそんな中、バルセロニスタが抱いていた唯一の希望がメッシの存在だった。
負傷者も多く、チームのコンディションも100%にはほど遠いなど、バルサの状態は限りなく悪い。そんな中、頼みの綱のメッシが先発から外れたことで、カンプノウもどこか引いた目で試合を見ているようだった。
メッシの不在はホームチームの士気を下げ、バイエルンには安堵をもたらすことになった。試合前の時点で、試合の行方はほぼ決まったようなものだった。
バイエルンの圧倒的な攻めに、前半からピンチの連続だったバルサ。
メッシだけではなく、ブスケッツも負傷で欠いたバルサは、序盤からバイエルンに技術面でも精神面でも押され続けた。第1レグと同様、バイエルンは統制された守備でバルサのミッドフィルダーに前を向かせない。ビクトル・バルデスのゴールキックの際に前からプレスをかけ、繋がせずに大きく蹴らせるなどの徹底した対策を貫いた。
1失点すれば6点を取らなければならなくなるというプレッシャーの下で硬いプレーになっていたバルサに対し、バイエルンは前半早々ロッベンが右サイドを抜けGKと1対1になるなど(ピケがギリギリのところでクリア)早速チャンスを作り始める。攻撃面でもサイドを起点に、2人、3人がスペースへと飛び込んでいくスピーディーで厚みのある攻めを繰り返した。
バルサは中央でボールを受けられるメッシがいないことで、ボールは自然とサイドへと渡ることになる。しかしサポートは一切なく、ダニエウ・アウベスは孤立。アウベス1人にバイエルンの選手3人という局面もあったくらいだ。