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激しさ戻った横浜FM・栗原勇蔵の、
“跳ね返す”力が日本を救う日。 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byYusuke Nishizono

posted2013/05/02 10:31

激しさ戻った横浜FM・栗原勇蔵の、“跳ね返す”力が日本を救う日。<Number Web> photograph by Yusuke Nishizono

中澤との新旧日本代表コンビで、横浜F・マリノスの守備を支える栗原勇蔵。ザックジャパンでは控えのCBに甘んじているが、オーストラリア戦でのプレーを虎視眈々と狙う。

Jの笛の世界基準への移行が栗原にとってプラスに。

 栗原に激しさが戻ってきた印象は、Jリーグの笛の世界基準への移行と無関係ではないようだ。

 Jリーグでは、コンタクトプレーで相手が倒れようとも正当なチャージはしっかりと認められなければならないという「ノーマル・フットボールコンタクト」の浸透を図っており、どちらかが倒れただけでレフェリーがすぐに笛を吹くというシーンは明らかに減った。

 栗原としては自分の特長を発揮しやすい、ファイトしやすい環境になったと言える。

 しかしながらそればかりが理由ではない。

 ハイパフォーマンスの裏には、やはり自分の武器とセンターバックとしての“本分”をあらためて見つめ直したことが大きい。

 跳ね返す、つぶし切る――。

 栗原はそこにセンターバックとしてのプライドをのぞかせる。

「跳ね返すことは、ボンバー(中澤佑二)とか俺とか自分たちの一番の売りにしているところ。ここで負けたらうちらじゃないから、そこはこだわってやってる。センターバックにもオフェンスの能力が求められる時代だけど、やっぱ自分にとってそれはプラスアルファの部分というか、プラスアルファもできなきゃいけないけど、ベースに置くところはきっちりとやんなきゃいけないっていうのが俺のなかにはあるから。

 ただ単に跳ね返すといってもクロスだけじゃなくて、相手のゴールキックとかそういったものをゴールから遠ざけることによって、未然に防げるものも多い。そこを跳ね返す、跳ね返せないでは全然違うと思うんで。そこはうちらの強みだし、こだわりは捨てちゃいけないと思う」

「サッカー人生のなかで、一番重要な試合」と語る昨年の豪州戦。

 ブラジルW杯本大会出場に王手をかけるザックジャパンは6月4日、埼玉スタジアムにライバルのオーストラリアを迎える。

 日本がホーム戦でW杯出場を決めたケースはいまだない。引き分け以上、他カードの結果次第でも決まる有利な状況は変わらないとはいえ、後がなく、必死でやってくるオーストラリアをホームで倒すことに意義がある。ただ彼らは間違いなく、これまでどおり日本の弱点である「高さ」を突いてくるはずである。

 昨年6月、アウェーのオーストラリア戦で“主役”となったのが、この栗原だった。

 序盤こそ日本キラーのケーヒルに手を焼いたが、ゴールに入りそうになったボールをかき出したり、後半20分にはショートコーナーからのクロスを押し込んで先制点も挙げた。終了間際には2枚目のイエローで退場となったものの、オーストラリアとの力勝負で己の存在感を示した一戦となった。

 栗原自身も「自分のサッカー人生のなかで、間違いなく一番重要な試合になった」と言い切る。

「点も取ったし、退場もした。もちろん自分のパフォーマンス自体に納得していない部分もあるけど、結果的にはやれたという思いが強いし、あの試合で自信もついた。背が高くて体が強いのは別にオーストラリアだけじゃないけど、ああいった相手と対戦する時にもし出番が回ってくるなら結果を残せないといけない。俺みたいなタイプがどれぐらいやり合えるか、どれぐらい戦えるかが、試合のカギを握ってくると思うんで。“仕事人”じゃないけど、出たらピンポイントでそういった仕事をしたい」

【次ページ】 オーストラリアとの“タイマン勝負”まであと1カ月。

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