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はたして相撲だけが「国技」なのか?
プロ野球も「不朽の国技」を目指す。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNaoya Sanuki

posted2010/07/11 08:00

はたして相撲だけが「国技」なのか?プロ野球も「不朽の国技」を目指す。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

協約の目的を定めた第3条は、いわば「憲法の前文」。昨年の改定で理念的な記述が大幅に削除され、事実上消滅した

「広く親しまれている」という点で「国技」の資格あり。

 この文言復活を考える中で、一番、大事なことはNPBが、より収益性の高い一般社団法人に移行するということだった。

 今回のオーナー会議では、12球団の機構への供出金をこれまでの年間7000万円から1億円に増額することも決められた。非常に苦しい財政の中で、利益追求に努めることは、今後のプロ野球発展にとっては不可欠な要素となる。ただ、そのときに利益追求だけに走るのではなく、「不朽の国技」たらんとすることで、社会意識を持ち続ける。その戒めとして、この一文復活は大きな意義があると感じる。

 野球は相撲のように日本古来の伝統スポーツ(一部では伝統芸能、伝統儀式ともいわれるが……)ではない。サッカーなど地域密着型の組織に比べると、プロ野球は特に企業(親会社)の意向が強く反映しがちなスポーツという色合いも強い。そういう意味では公益性、公共性にやや欠けるとされる部分が、「国技」としてはマイナスかもしれない。

 ただ、観客動員の多さやそのビジネス規模の大きさを考えると、日本で最もメジャーなスポーツが野球なのは現実だ。「広く親しまれている」という点では、野球が日本の「国技」であっても、まったくおかしくないのも事実なのだ。

野球関係者は「国技」という言葉を意識すべきである。

 野球が果たして「国技」なのか? それとも相撲こそ「国技」にふさわしいのか? その論議は別の機会に委ねるとしよう。

 ただ、こうして「国技」たらんとする意識は、スポーツ関係者、特に野球や相撲など収益の高いメジャースポーツの選手、関係者は強く持つべきものなのだ。そして球界がもしこの一文を復活させるならば……。

 お題目だけではなく、現実にどう実践していくのか。今後はそのことに、注目したい。

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