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敗因は内川、阿部、能見ではなく……。
侍の夢を砕いた“第2先発”への固執。 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNaoya Sanuki

posted2013/03/19 12:35

敗因は内川、阿部、能見ではなく……。侍の夢を砕いた“第2先発”への固執。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

能見は準決勝プエルトリコ戦に2番手で登板すると、7回に痛恨の2ランHRを被弾。「マウンドの硬さは関係ない。打たれたわけですから」と悔しさを滲ませた。

2番手投手に先発同様の試合運びを望んだ首脳陣。

 関係者の話によれば、代表合宿前にブルペン担当の与田剛投手コーチは、継投についてこのように話していたという。

「投球制限のあるWBCでは、2番手にある程度のイニングを投げてもらう必要がある。前回大会では結果的にKOされる先発ピッチャーがひとりも出なかったおかげで、第2先発への負担は想像していたよりも少なかった」

 序盤に4、5点を許して降板することがKOだとすれば、今大会も実はそういった投手はひとりもいなかった。プエルトリコ戦を含め、3試合、15回をわずか1失点に抑えた前田健太をはじめ、先発は計25回2/3で自責点は4。防御率にして1.40は立派な数字といえるだろう。

 ただ、ブラジル戦の田中将大(2回1失点)や台湾戦の能見(3回途中1失点)が象徴するように、大量リードをしていた中国戦とオランダとの2試合以外は、先発投手に見切りをつけるのが早かった。

 だからといって、前回のように状況に応じた継投をするのではなく、首脳陣は2番手投手らに対し先発同様の試合運びを望んでしまった。

曖昧な判断ゆえに増した、2番手投手への負担。

「全員が戦力で、あらゆる持ち場を与える可能性はある」

 と、東尾・与田の両投手コーチが語ったように、そういった曖昧な判断があったが故にブルペンで待機する2番手投手の負担が増していったのだ。

 仮にも第2先発にこだわりを見せるのであれば、事前に綿密なプランニングができたはずではないだろうか。

 WBCで中継ぎ経験がある先発投手から、こんな話を聞いたことがある。

「アメリカのマウンドは固くてスパイクで掘ることはできないので、あまり気にするピッチャーはいないと思います。でも、日本の場合はアメリカより柔らかい。先発が中継ぎをやるとしたら、慣れていないと歩幅を合わせられないことが気になるかもしれないです」

 第2ラウンドまでが日本で開催されることはだいぶ前に分かっていたこと。つまり、そういう経験を経た人間、前回大会で中継ぎとして投げた投手にこそ、第2先発の役割を最初から与えるべきではなかったか。

【次ページ】 「能見のことは結果論」と山本監督は語っているが……。

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