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2013年、柏レイソルは生まれ変わる!
ACL初戦勝利で見せた「成長」の証。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byGetty Images
posted2013/02/28 12:40
虎の子の1点を奪ったクレオ(写真中)とレアンドロ・ドミンゲス(左)。柏は、高さに勝る貴州のロングボール攻撃に苦しめられたが、システムを変更するなど柔軟に対応し、勝利に結びつけた。
日本勢で唯一、AFCチャンピオンズリーグ(以下ACL)初戦で勝ち点3を手にした柏レイソルのネルシーニョ監督は、2月27日に中国南部の貴陽市で行なわれた貴州人和(中国)戦後の記者会見でこう切り出した。
「予想どおり……」
言葉は「ハードなゲームでした」と続き、さらに勝因を口にする。ロングボールを多用する相手のスタイルに“お付き合い”せずグラウンダーの地上戦に徹すれば、混乱することなく自分たちのペースに引き込める。結果的には、決勝点となる前半の得点が非常に大きかった。焦って高さに頼る相手の戦術に冷静に対応し、苦しい時間をしのぐ――。それらが「勝利に値するプレー」であったと、指揮官は振り返った。
柏にとって直接的な勝因となった戦術や戦略の分析よりも大事だったのは、それらがすべて「予想どおり」だったことである。アジアの舞台で、しかも敵地で臨む未知の相手との対戦が“想定内”であったことは、今季の柏が、昨季とは違うチームに生まれ変わりつつあることを意味している。
「王者」として迎えた2012年シーズンに直面した苦しみ。
2011年シーズンには、昇格1年目でのJ1制覇という偉業を成し遂げた。しかし柏は、王者として迎えた2012年シーズン、いくつもの“想定外”に直面していた。
特別なモチベーションを持って臨んだ2011年のクラブW杯で大きな手応えを手にしたものの、激闘の疲れをとるために2012年シーズンの始動が遅れる。FC東京とのゼロックス杯では“らしさ”を発揮して手堅く勝利したが、組織の継続的な完成度の高さを印象付けた一方で、実はその勝因が前年からの“遺産”でしかないことに気づかなかった。
2012年シーズン開幕前、ジェフ千葉とのプレシーズンマッチ「ちばぎんカップ」、ゼロックス杯の勝利によって手にしたのは、「今年もやれる」というぼんやりとした自信でしかなかった。しかし実際には、一度完成されたチームのスタイルに新戦力が溶け込む時間もなく、ACLから始まったシーズン開幕直後の連戦の中での実戦調整を強いられ、思うような結果が出ない日々に首をかしげるしかなかった。