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ユトレヒトの“超天然サッカー小僧”。
高木善朗が向き合う2年目の挫折。 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2013/02/22 10:30

ユトレヒトの“超天然サッカー小僧”。高木善朗が向き合う2年目の挫折。<Number Web> photograph by AFLO

元プロ野球選手・高木豊氏の次男の高木善朗。宇佐美貴史や宮市亮ら、いわゆるプラチナ世代の一人で、パスセンスや得点力を認められて東京ヴェルディから18歳でオランダのFCユトレヒトに移籍した。1年目の昨シーズン記録した6アシストはチーム最多だった。

新システムへの適応を阻むいくつかの理由。

 近年、オランダでは伝統の4-3-3から、中盤がダイヤモンド型の4-4-2に変更するのが流行している。昔ほど突出したウィンガーが育っていないのが原因だろう。ボウタース監督もこれを試したところ、チームの調子が上向きに(23節を終了して6位)。それにともなって、高木のポジションはトップ下やFWになった。

 高木は元々、将来的にトップ下をやりたいと考えていたため、チームから「真ん中をやってほしい」と言われたときも受け入れた。だが、実際にプレーしてみると、やはりウィングとは習熟度が違う。オランダ1年目に積み上げた感覚を、微修正しなければいけなくなった。

 新システムに適応するうえでひとつ難しいのは、トップチームとサテライトチームで採用しているシステムが必ずしも一致しないことだ。

 オランダでは若手の出場機会の場として、23歳以下が中心の若手リーグが行なわれている。だが、その“ヤング・ユトレヒト”はたびたびオランダ伝統の4-3-3を採用している。その場合、高木のポジションは左ウィングになる。“ヤング・ユトレヒト”の試合で高木はゴールを決めているが、それでもトップチームで出番がまわってこないのはポジションが固定されていないことも影響しているかもしれない。

「ヤングリーグは一番のアピールの場。そこで点を取ろうとしているし、実際に取っている。だからゴールを決めてもベンチにも入れないときは……それは悔しいですよ。1点じゃ足りなかったと考えるしかない」

挫折がないと、成長できないって思うようになった。

 挫折、という単語を高木は使った。

「昨季は出られないのも想定できたけど、今季ここまで出られないとは想定していなかった。本当に悔しい。でも、見方を変えたら、自分にとってはポジティブな挫折にできるのかなって。挫折がないと、成長できないって思うようになった。

 試合に出ているときって充実感があるから、本気で悔しいって思うことが少なくなる。でも今はいつチャンスが来るかわからないので、常にいい準備をして、常に結果を残さないといけない。自分を高める時期なんじゃないかなって。もうポジティブに捉えるしかないっすよ。これをマイナスに捉えたら、どっかに移籍したいとかになっちゃうので。意地でも結果を出してやります」

 父親がプロ野球選手というスポーツ一家で育ったためか、高木はオンとオフを切り替えるという感覚があまりない。たとえば音楽を聴いていても、すぐに頭の中はサッカーのことに占拠されてしまう。

「自分で好きな曲を選んだはずなのに、まったく耳に入ってこない。あんまり良くないですよね(笑)。ただ、いろんな人から『プロをやる時間は本当に短いから、それくらいサッカーのことを考えてもいい』って言われて。プロサッカー選手でいられるのは人生の中でほんのちょっとだから、今は24時間自分がかけているものを考えたい」

【次ページ】 飛行機の搭乗よりも、サッカーの方が大事――。

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