ソチ五輪 雪と氷の情熱BACK NUMBER
“日本人らしいプレー”で五輪出場!
女子アイスホッケーが強くなった方法。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKyodo News
posted2013/02/20 10:31
ソチ五輪最終予選でデンマークを破り、五輪出場を決めた女子アイスホッケー日本代表。日本の全競技中で最初に五輪出場を決めたチームとなった。
アイスホッケー女子日本代表がソチ五輪出場を決めたニュースは、嬉しい驚きとして日本国内を駆け抜けていった。おりしも女子柔道や学校体育での体罰が、社会的問題として取り沙汰されているタイミングだ。全競技を通じて国内初の出場権獲得は、雲の切れ間から漏れる陽光のような爽快さを運んできた。
'98年の長野五輪から正式種目となったアイスホッケー女子は、'02年のソルトレイクシティ五輪から8カ国で争われている。出場国の決定方法には世界ランキングが用いられ、現在は上位6カ国が予選なしで出場する。
国際舞台をリードするのは、アメリカ、カナダと欧州勢だ。日本は過去3大会連続で出場権を逃してきたものの、最終予選の最終戦まで可能性を残してきた。スポットライトを浴びる機会こそなかったが、世界の舞台は遥か遠くではなかったのである。
あと一歩を踏み出すために、日本アイスホッケー連盟はアベノミクスならぬ「3本の矢」を用意した。強化合宿の回数を増やし、カナダからコーチを招き、メンタルトレーナーをスタッフに加えたのである。
飯塚祐司監督が説明する。
「前回予選と比較して、合宿の回数を増やしていただきました。昨年5月から月1度のペースで合宿や試合を行ない、合宿では1週間前後の氷上練習を重ねました。それによって、五輪予選へ必要な準備を進めていくことができました」
メンタルトレーナーの加入で、ガラリと変わったチームの雰囲気。
元カナダ代表DFのカーラ・マクラウドがコーチとしてスタッフに加わったのは、昨年2月の強化合宿からである。トリノとバンクーバーで金メダルを獲得し、引退後はカナダの若年層で指導者として結果を残していた彼女は、女性の視点から技術面を中心に飯塚監督をサポートしていく。
メンタルトレーナーは昨年11月からチームに合流した。飯塚監督が続ける。
「チームの雰囲気が、ガラリと変わりましたね。チーム全体が明るくなりましたし、私たちもできるんじゃないかという自信が感じられるようになっていきました。今年1月の苫小牧合宿で中国と試合を行ない、4戦全勝したことで、私たちはできるんだとさらに自信を深めたことも、最終予選につながっていったと思います」
苦い記憶がある。'08年11月に開催されたバンクーバー五輪最終予選だ。'08年2月からチームを率いる飯塚監督は、予選突破の手応えを感じていた。ところが、中国に出場権を譲ってしまうのである。
「前回のチームも、五輪に出場できるレベルにあったと思います。ただ、最終予選前の合宿から、精神的なプレッシャーのためかパフォーマンスが下がってしまいました。そのまま調子が上がらずに、最終予選を迎えることになり……。私自身もメンタルについて学んできたつもりでしたが、専門的な方にお願いした方がいいと考え、強化本部長とも相談してメンタルトレーナーさんに来ていただいたのです」