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モーグル伊藤みき、“納得”の銀!
世界選手権で見せた日本勢の活躍。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2013/03/09 08:02
ワールドカップで過去4度の表彰台のうち、3度が五輪で実施されないデュアルモーグルだった伊藤みき(左)。
初のメダルは、殻を破るものでもあった。
3月6日、フリースタイルスキー世界選手権のモーグル決勝が行なわれ、伊藤みきが銀メダルを獲得した。選手がシーズンの最大の目標とするのが世界選手権である。伊藤は2009年の同大会では対戦型のデュアルモーグルで銀メダルを手にしているが、五輪種目であるシングルのモーグルでのメダルは初めてだ。
5日の予選を8位で通過した伊藤は、「アグレッシブさに欠けた」と反省し、翌日の決勝に臨む。迎えた決勝ではその言葉通り、予選とは異なる攻撃的な滑りを見せ、3位に入る。さらに上位6名のみが出場できるスーパーファイナルで2位となったのである。
伊藤は、'06年のトリノ五輪に高校3年生で出場し、少しずつ成長してきた選手だ。
'08-'09年のシーズンにワールドカップ8戦のうち6度、ひと桁順位に入り、世界選手権でもモーグルで4位、デュアルモーグル2位の成績を残した。その後、膝を痛めたことでバンクーバー五輪は12位に終わるなどしばらく苦しんできたが、昨シーズンはワールドカップの後半5戦すべてで8位以内になるなど、復調を果たした。そして先月、猪苗代で行なわれたワールドカップのデュアルモーグルでは初優勝。ソチでの活躍が期待される選手としてクローズアップされて臨んだのが世界選手権だった。
「金メダルを獲った人がお祭りを一番楽しめる」(伊藤)
伊藤の滑りの特徴と言えば、大崩れしにくい安定感とレース中の負けず嫌いだ。一方で、デュアルモーグルで見せる攻撃的な滑りがモーグルではなかなか発揮できない面もあった。だからデュアルモーグルの方が好成績を残してきた。
だが今大会、決勝ではスーパーファイナルに進んだ6選手中ただ一人、25秒台となる25秒54をマーク。スーパーファイナルでも優勝したハンナ・カーニーに次ぐタイムで滑りきった。そして結果にもつなげた今回の世界選手権は、デュアルモーグルで見せてきた滑りをシングルでも披露し、デュアルだけではないところを示した大会でもあった。自身もこうコメントしている。
「自分のスキーをして、メダルという形で返ってきたのは自信になりました」
伊藤は、バンクーバー五輪を前に、抱負をこう語ったことがある。
「金メダルを獲った人がこのお祭りを一番楽しめる。今度は私が一番楽しみたいんです」
バンクーバーではかなわなかったが、プレ五輪シーズン終盤での好成績は、確実に来シーズンにつながるはずだ。