オリンピックへの道BACK NUMBER
福原愛の初連覇&丹羽孝希の台頭。
卓球男女、リオへの勢力図を占う。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2013/01/27 08:01
初優勝した昨年に続く2度目の日本一に輝いた福原愛。決勝で対戦した石川も「ロンドン五輪の後、3カ月も休んでいたのにすごいなと思った」と脱帽していた。
1月15日から20日まで、卓球の全日本選手権が行なわれた。
ロンドン五輪で活躍した代表選手たちは今後へどう取り組んでいこうとしているのか。あるいは次代の日本代表となるべく、台頭する選手はいるのか。
2016年のリオデジャネイロ五輪を視野に入れつつ、これからの勢力図がどうなっていくのかを占う大会でもある。
そうした関心が集まる中、女子シングルスを制したのは福原愛だった。
福原はロンドン五輪後の昨年8月24日、右ひじの手術に踏み切った。その後、約3カ月の休養を取り、練習を再開したのは11月はじめのこと。実戦の場を踏む回数も少ない中で臨んだ。
当然、不安は大きかっただろう。しかし福原は、初戦となったシングルス4回戦から、4-0、ないしは4-1と圧倒し、順当に勝ち上がっていく。準決勝こそベテランの藤井寛子の粘りに苦しんだものの、4-2で退ける。
福原の積極的な強打に、石川佳純は押されっぱなし。
迎えた決勝、石川佳純との一戦は、五輪代表として銀メダルを手にした両者ならではの白熱した戦いとなった。最初のゲームを石川が取ったが、福原も第2ゲームを取り返す。続く第3ゲームを奪われるシーソーゲームとなったが、第4ゲームから福原が3連続で取り、4-2で勝利を収めた。特に第6ゲームは、6連続得点などで11-3と圧倒。石川が呆然と下を向く場面もあるほどだった。
石川との試合で印象的だったのは、ラリーの中で、強打のバックハンドを中心に積極的な打ち合いに出る姿だった。その思い切りのいいプレーは、これまでとの変化を感じさせた。
手術後のブランクのおかげで、いい意味で開き直れた。
今までに経験したことのない長いブランクがあり、試合の感覚も乏しい中で、どうしてそんな試合ぶりを見せることができたのか。
ひとつには、手術の効用がある。手術前は痛みを恐れてフルスイングをためらうこともあった。だが、治療後は違和感なく肘を動かすことができるようになったという。
「(手術後は)うれしくて、いっぱい練習しました」
と、練習での取り組みも変わったことをコメントしている。さらにもうひとつの理由をこうあげている。
「手術のあとだったので、いちばんプレッシャーが少ない選手だと思って臨んで、伸び伸びとプレーできました」
つまりは、自分はブランクがあるから、もし結果が出なくてもやむを得ない、という開き直りが思い切りのいいプレーにつながったのだ。そして優勝という結果を得たことは今後の財産になる。
福原自身もこう振り返っている。
「こういう(思い切った)プレーの仕方もあるんだと自信につながりました」
また、福原に敗れたとはいえ、石川もまたプレーの正確性、テクニックにおいて、国内ではやはり抜きん出ていることをあらためて示し、福原とともに存在感を示した。