スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
議論百出で注目の米国・野球殿堂。
なぜ日本の殿堂は人気が無いのか?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/01/19 08:01
2011年の日本シリーズ、福岡ソフトバンクホークスvs.中日ドラゴンズの第7戦。激戦を制して秋山監督率いるホークスが日本一となった。秋山監督はまだ殿堂入りしていない。
毎年1月は、日本とアメリカで野球殿堂入りの投票が行われる。
まず、アメリカの投票で特徴的なのは、投票が行われる前から新聞紙上などで議論が行なわれることだ。シアトルであれば、「エドガー・マルチネスの殿堂入りの可能性は高まっているのか?」といった話題である。つまり、アメリカでは殿堂入りの選手を輩出することは、その町の名誉につながるのである。
今年のアメリカでの話題は、引退から5年が経過して殿堂入り資格を得たバリー・ボンズ、ロジャー・クレメンスがどれだけ得票を集めるかということだったが、ふたりとも実績は抜群ながら、やはりドーピング疑惑がついてまわっていることから、殿堂入りはならなかった。
殿堂をめぐってのアメリカと日本の大きな違いは、アメリカでは投票資格を持つ記者が、「なぜ自分はバリー・ボンズに投票しないのか?」というオピニオンを紙面で発表することだ。これがなかなか興味深い。今年でいえば、1990年代から2000年代にかけての、メジャーリーグにおけるステロイド時代の総括に議論が発展するからである。
つまり、「世論」と殿堂は切っても切れない関係にあり、だからこそ誰が殿堂入りするかは耳目を集めることになる。
アメリカの殿堂入りは、ライブ感覚の選挙と似た雰囲気を持っている。
なぜか……広島出身者がここ2年間で連続して殿堂入り。
私が初めて日本の殿堂入りした選手たちのレリーフが飾ってある野球体育博物館を訪れたのは、小学校3年生の時だった。とても神聖な場所に足を踏み入れた──そんな記憶が残っている。
今年、日本では大野豊、外木場義郎の広島出身のふたりが殿堂入りを果たした。昨年は北別府学、故津田恒実両氏が「当選」しているから、広島関係の元選手が2年間で4人も殿堂入りしたことになる。
これは偶然ではない、というのが私の推測である。
現在、投票資格を持つ記者が広島に縁が深いのではないか、とも思う。あるいは影響力が強い人がいるのかもしれない。
ただし、日本の得票結果を見ると、「この人は殿堂入りすべきじゃないか?」という人が落選していることに気づく。