Jリーグ万歳!BACK NUMBER
JFLの遅咲き大物FWがJへ移籍!!
実例で考える“J3構想”の可能性。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/01/16 12:10
関東リーグ1部だったY.S.C.C.でプレーしJFL昇格の原動力となった辻正男(写真右端。コンサドーレでの練習参加風景)。彼のようなステップアッパーの存在が下部リーグを活性化する。
国内リーグの実質“4部”から這い上がった不屈の男。
昨季のJFLにおいて、辻の存在感は頭一つ抜けていた。
スピードを活かした突破、決定力の高さ、活動量の多さを兼備するアタッカーは、「Jでも十分に通用する」とかねてから高い評価を得ていた。昨季終了後にはコンサドーレ札幌や横浜FCの練習に参加。4年間の下積みを実らせて、ついにJリーガーの肩書を手に入れた。
彼のキャリアのスタート地点である関東リーグは、J1から数えて国内リーグの“4部”に相当する。湘南ベルマーレの古橋達弥(元ホンダFC)、清水エスパルスの村松大輔(元ホンダFC)、横浜FCのシュナイダー潤之介(元群馬FC)と、過去にもアマチュアからプロの世界へと這い上がった選手はいるが、地域リーグからのJリーグ入りという前例は少ない。
念願のJ入りを果たした辻は、Y.S.C.C.のクラブ公式HPを通じて次のようなメッセージを発した。
「これまで4年間、Y.S.C.C.でプレーさせていただき、心技体、すべてにおいてレベルアップできたと感じています。また、あきらめずに努力を続けることの大切さを改めてかみしめています」
彼のこの言葉に、日本サッカー界がステップアップするためのヒントがある気がした。プロを志す選手にその道を諦めさせないシステムを構築することも、これからの日本サッカー界にとって非常に重要なことではないだろうか。
下部組織の選手たちが、夢を追い続けられるように……。
次代のスターをいかにして育てるか、つまり「育成の充実」は日本サッカー界が抱える課題の一つである。しかしそのゴールは、世界に通用するトップスターを育てることだけではない。トップを目指そうとする選手たちを増やす、つまり選手たちが夢を追い続けられるシステムを作ることも一つのゴールだと思う。
一般的に、プロになるための最短距離は、Jクラブの下部組織というエレベーターに乗ってトップに昇格することと考えられている。その結果として、優秀な人材がJリーグの下部組織に流れ、育成年代における“J”と高校の間に確かな力の差が生じていることは周知の事実だ。高校サッカーからプロの世界へジャンプアップする選手は一時期に比べて大幅に減少し、正月の風物詩である高校サッカー選手権大会はレベルの低下が叫ばれて久しい。