リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
リーガのトップ2には結局迫れず……。
バレンシアの監督解任の背景とは。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2012/12/12 10:30
ペジェグリーノ解任後は12月5日のCLリール戦、12月8日のオサスナ戦と共に1-0で連勝を飾ったバレンシア。写真はリール戦で決勝点となるPKを決めたMFジョナス。
監督に必要なのは、組織作りの方法論ではなく人徳!?
たとえば、グアルディオラはアメとムチを使い分けたが、もっぱらアメを与える方だった。常に選手の側に立ち、選手のように考え、対話し、褒めることで刺激した。公の場でもへりくだって選手の功績を称えるばかりだった。
スペイン代表のデルボスケもグアルディオラに近く、圧力をかけて選手を動かすというよりは、選手が気持ち良くやれる状況を作ることに腐心する。
一方で、自らのリーダシップを誇示して、ムチを振るうのがモウリーニョだ。直接叱るだけでなく、メディアをも利用して選手にプレッシャーをかける。
だが、どれが良いというわけではない。グアルディオラやデルボスケのやり方では選手が図に乗る可能性がある。モウリーニョ式は、物事がうまく運ばなくなった途端、選手が不満を抱く。
肝心なのは、そういった“弱点”を抑え、カバーする人柄を監督が備えていることだ。
バレンシアのファンたちは御年74歳の頑固爺監督を希望したが……。
話をバレンシアに戻すと、選手の引き締めを求めるファンは、ペジェグリーノの後任に前スペイン代表監督ルイス・アラゴネスを希望した。厳しさでは人後に落ちない御年74歳の頑固爺である。
キャプテンのアルベルダも、「ロッカールームで、声を荒げなければならないとき、ペジェグリーノはそうしていた。それも一度や二度じゃない」と語り、前監督の甘さを否定しつつ、低迷の責任を選手に課した。
「選手全員ができる限りのプレイをしていなかった。監督の要望に応えていなかった」
しかし、クラブ――今度は会長ではなくスポーツディレクターのブラウリオ・バスケス――が選んだのは、過去アスレティックやエスパニョール、オリンピアコスなどを率いてきたエルネスト・バルベルデだった。
バスケスが考えるバレンシアの問題は、選手のメンタリティではなく、サッカーそのものにあるからだ。