日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
デンマーク戦での勝機、見つけたり!
日本に「ジャブラニ」の“祝杯”を。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byNaoki Nakanishi/JMPA
posted2010/06/24 10:30
スナイデルの強烈なパワーシュートを弾き損ねてしまった川島永嗣は試合後、悔しそうに後半8分の失点シーンを振り返った。
「(シュートが来る)30cm手前まで(ボールが)見えていたんです。消えたというか、見えなくなった。普通のボールだったら変化しないけど、このボールはインパクトのあるシュートのときに変化してくる。難しいシーンだった」
川島はパンチングでゴール外側に弾こうとしたのだが、威力のあるブレ球を枠外に弾き返せなかった。日本はブロックをつくった組織的な守備で前半、要注意人物のスナイデルをシュート1本に抑えていただけに、ミックスゾーンで質問に答える川島から無念そうな表情が消えることはなかった。
リードしてからのオランダが攻撃の手を緩めたこともあって、スコアは0-1で終わった。結果的に岡田ジャパンは、ズールー語で“祝杯”を意味する今大会の公式球「ジャブラニ」の変化に泣く形となってしまった。
公式球「ジャブラニ」の負の影響は攻撃面にも及ぶ。
ボールが不規則に変化する特徴を持つこの「ジャブラニ」の対応に、W杯に出場するほとんどのチームが思いのほか苦しんでいる。
イタリアのGKブッフォンが「ボールの軌道が読めない」と嘆けば、スペインのGKカシージャスも「まるでビーチボールのよう」とこれまでと違うボールの感触に戸惑いの声を上げている。“GK泣かせ”のボールと言うことができ、C組のイングランド―米国戦(12日)ではイングランドのGKグリーンが真正面で受けたシュートを後逸してしまうまさかのミスで、イングランドは勝利を逃がしている。ジェラードは「ボールの影響があったかもしれない」とグリーンのミスをかばったほどだ。
しかし、守備の面ばかりではなく、攻撃にもボールの影響が出ている。
ここまでのグループリーグの戦いを見てみれば、空気抵抗の少ない高地の影響も手伝って、ミドルシュートやFKをふかすシーンがやたらと多いことに気づく。ロングパスのミスも目立つ。グループリーグ2巡目を終えてのゴール数は32試合で67ゴール。前回ドイツ大会の同時点での75ゴールを下回っている(6月21日現在。以下すべて同様)。