ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
ブンデスリーガでの日常で取り戻した、
長谷部誠の強い心とキャプテンシー。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2012/11/22 10:31
監督交代後は右MFのレギュラーとして、カップ戦含め5試合連続で出場している。チームもこの間、4勝1敗と好調を維持。11月18日のホッフェンハイム戦ではヘディングで今季初ゴールを挙げた。
「3次予選で勝てなかったことには良かった部分もある」
そんな中で、迎えたのがオマーンとのアウェイゲームだった。長谷部は最終予選を迎えるにあたって、アウェイでの戦いを警戒していた。例えば、6月のオマーンとヨルダンと戦った最終予選の最初の2試合。ファンの後押しをうけ、素晴らしいホームの雰囲気のなかで戦いしっかりと2連勝したあとのこと。
ファンのサポートがいかに大きかったのかについて感謝を述べた後、口にしていたのは危機感だった。
「本当に良い雰囲気だったし、あの応援にはすごく感謝してる。でも、逆にホームではあれくらいじゃないと。アウェイでは何が起きるかわからないんだから」
だから、批判は受けたが、3次予選を首位ではなく2位で通過したことも、意味があったと考えている。
「3次予選ではアウェイで、北朝鮮に負けて、ウズベクとは引き分け。勝てていない。2位通過だったけど、それが良かった部分もあると思う。あれで、簡単に勝てないということをみんながわかったと思うから」
そうやって準備をして臨んだのが、長谷部にとってのオマーン戦だったのだ。
オマーン戦では、仲間を鼓舞するキャプテンがいた。
清武のゴールで1点リードを奪ったまま迎えた後半32分。FKからムバラクに決められて、1-1の同点にされた直後、長谷部は一瞬たりともひるまなかった。
失点直後、失点のきっかけとなったFKを与えた吉田麻也が倒れ込んでいるのを見て、叫びながら手をたたく。そのあとみんなが立ち上がると、また手をたたいて鼓舞する。相手がようやく相手陣内に戻ったところでも三度、両手を叩いた。そして、日本ボールのキックオフの直前にも、もう1回。
試合前からアウェイでの試合が簡単に終わるはずはないと考えていたし、吉田の与えたFKにしても審判の厳しい判定によるものにも思えるのだが、「ペナルティキックを与えなかったのは良かったなと思います。(中東でのアウェイゲームならば)あれくらいの接触だったら、絶対に(ファールだとして審判が笛を)ふきますね」と長谷部は言う。困難な事態に直面したときに備えていたのだ。