ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
ブンデスリーガでの日常で取り戻した、
長谷部誠の強い心とキャプテンシー。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2012/11/22 10:31
監督交代後は右MFのレギュラーとして、カップ戦含め5試合連続で出場している。チームもこの間、4勝1敗と好調を維持。11月18日のホッフェンハイム戦ではヘディングで今季初ゴールを挙げた。
11月14日の試合後、キャプテンの長谷部誠には明らかな“異変”が起こっていた。普段とは違う。声が嗄れていたのだ。
風邪をひいたのかと問われた長谷部はこう答えた。
「いや、ひいてないですよ」
アウェイでオマーンを下して、ブラジルW杯の出場権獲得に王手をかけたこの日、長谷部に一体、何が起こったのか。
長谷部にとって、9月以降の代表戦は「試合勘のなさ」というレッテルにわずらわされ続ける日々だった。8月24日に今季のブンデスリーガが開幕したが、長谷部は出場機会が得られない日々が続いた。
今シーズン、初めてプレーしたのは、マガト監督が解任され、その後を任されたケストナー暫定監督の初陣である10月27日のデュッセルドルフ戦のことである。
それまでは1秒たりともドイツの地でプレーする機会は与えられなかった。それゆえに、9月6日のUAEとの親善試合、11日のイラクとのW杯最終予選。そして、10月の欧州遠征での2試合。長谷部はつねに、試合勘のなさについてたずねられた。執拗に同じ質問にさらされた。
唯一無二の存在だからこそ浴びせられる厳しいチェック。
例えば、UAEとの親善試合ではその後に控えるW杯予選のイラク戦を良い状態に迎えるために45分間の出場にとどめることを試合前に監督と話し合い、入念にプランを立てていたことはあまり報じられていない。
興味深いのは2009年9月の欧州遠征時との比較だ。このときは7月3日の練習試合で怪我をしてから、ヴォルフスブルクで練習試合を1試合こなしただけの状態で、9月5日にオランダとの、9日にガーナとの親善試合にプレーした。しかし、このとき、少なくとも試合後に試合勘について話をふってくる記者はただの1人もいなかった。
今年の長谷部が“試合勘”について問われ続けたのは、彼の存在が日本代表にとってそれだけ大きなものになっているからだろう。代表では年齢も出場試合数も上から数えたほうが早いし、何よりキャプテンである。注目と厳しい目にさらされるのも当然だ。