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10月の熱戦とフォーマット変更。
~MLBの「長すぎるポストシーズン」~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2012/11/04 08:01
2年ぶり7度目となるワールドシリーズ優勝を決め、喜ぶジャイアンツの選手達。ポストシーズンは、地区シリーズは0勝2敗から、リーグ優勝決定シリーズは1勝3敗から這い上がって掴んだ世界一だった。
おお、やっぱり、というつぶやきを残して、10月が終わった。
「おお」とはサンフランシスコ・ジャイアンツのしたたかさに対する感嘆である。NLDS(ナショナルリーグ・ディヴィジョンシリーズ)の彼らは、本拠地で2連敗したあと、敵地で3連勝してレッズをうっちゃった。NLCS(ナショナルリーグ・チャンピオンシップシリーズ)の彼らは、1勝3敗の剣が峰で踏ん張り、カーディナルスに3連勝してナ・リーグのペナントを手にした。
そのあとの成り行きは、みなさんご存じだろう。ジャイアンツは、タイガースに4連勝してワールドシリーズを制した。敗れたタイガースは、つい先日、ヤンキースに4連勝してア・リーグを制覇したばかりだった。
というわけで、「やっぱり」が登場する。1988年のアスレティックス、'90年のアスレティックス、2006年のタイガース、'07年のロッキーズ、そしてふたたび12年のタイガース。
地区シリーズが面白かった分、日程のひずみが浮き彫りに。
いま挙げた球団は、すべてLCS(リーグ・チャンピオンシップシリーズ)を4勝0敗で勝ち上がり、いずれもワールドシリーズであえなく敗退した。数字を合計してみると、LCSの成績が20勝0敗で、ワールドシリーズの結果が2勝20敗。楽な道を歩んできたチームは、最後の最後に煮え湯を飲まされるという掟が浮上する。いま、どこかのお坊ちゃまがくしゃみをしたでしょうか。
というわけで、苦難の道を恐れなかったジャイアンツは、この3年間で2度のシリーズ制覇を達成した。1996年から2000年にかけての5年間で4度のシリーズ制覇をなしとげたヤンキースにはまだ及ばないが、これは「準王朝」と呼んでもおかしくないほどの快挙である。しかも、勝ち方が賢い。堅実な投手陣とコツコツ打線の融合で、パワー・デュオと絶対的エースをそろえたタイガースに、最後まで力を発揮させなかった。タイガース……もう少し底力があると思ったのだが、攻撃陣(とくに下位打線)に厚みを欠くのが致命的だった。
それにしても、24日間で37試合という日程は、ちょっときつすぎるのではないか。「天国か地獄かわからない」ポストシーズンの1カ月を過ごして、私は思う。野球漬けにされて腹がいっぱいになったからそう思うのかもしれないが、2012年は、ディヴィジョン・シリーズが面白かった分、日程のひずみがことさら浮き彫りにされたような気がする。
最も顕著な例が、4連勝して4連敗したタイガースの浮き沈みだ。