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松田宣浩を封じて日本Sへ王手!
日ハムの“陰の功労者”鶴岡慎也。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2012/10/19 11:55
10月18日CSファイナル第2戦、6回のソフトバンクの攻撃。内川の中飛で松田が本塁に走り込み、鶴岡がタッチアウトにとった場面。
第1戦、第2戦ともに絶妙なリードで試合を作った鶴岡。
第1打席の初球。そんな松田のはやる気持ちをあざ笑うかのように、内角へのスライダーでストライクを奪ったかと思えば、2球目にはストレートで意表を突く。3、4球目には2球続けてスライダーを要求し、サードゴロに打ち取った。
第2打席では、初球に内角低めのストレートを見せておき、2球目にスライダー、3球目にチェンジアップで松田のタイミングを外し、4球目のスライダーで空振り三振と、完全に手玉に取った。
1死一塁で迎えた6回の第3打席でも、初球は外角のストレートで「真っ直ぐもあるよ」と松田に意識付けをさせておき、2球目にチェンジアップ、3球目にはスライダーと2球続けて変化球を投げることによって松田のフォームを崩し、併殺打に切って取った。
第2戦、先発が技巧派の武田勝になっても変化球中心の攻めは変わらない。
前の試合同様、第1打席の初球に内角へのスライダーでショートフライに。第2打席では、チェンジアップとスライダーのコンビネーションでショートゴロに打ち取った。
2試合通じて唯一の失投といえたのが、初球は変化球で入りながら、2球続けてストレートを要求したことで左中間フェンス直撃の二塁打を許した6回の第3打席だけだった。
松田宣浩と真摯に向き合い、ほぼ完ぺきに封じ込めることに成功。
巨人の阿部慎之助が以前、リードについてこんな持論を述べていたことがある。
「バッターも人間ですから結局のところ本当に何を考えているかは分からない。だから、そこはキャッチャーが、自分で考えてリードするしかないですよね。過去のデータも大事なんですけど、やっぱり直感というか、そういうのも大事なんだと僕は思います」
名将・野村克也の「内角高めに投げ相手に意識付けをさせておき、外角で勝負をする」といったデータに基づいた配球論は、いわば現代野球におけるリードのセオリーといえるだろう。
もちろん、それも効果はある。しかし、阿部が言うように、セオリーに固執してしまっては打者の本質を見極めることができない。
鶴岡は、松田というひとりの打者としっかりと向き合ったことで、第2戦までほぼ完璧に松田を封じることができた。