オリンピックへの道BACK NUMBER
日本のトップチームが代表になれず!?
カーリング男子、五輪への“大誤算”。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byImaginechina/AFLO
posted2012/10/07 08:01
中国で行なわれた昨年のパシフィックアジア選手権に日本代表として出場した、敦賀信人擁するチーム北見(前チーム常呂)。他チームの急成長もあり、参加国中最下位の6位に終わった。
トップチームの欠場でソチ五輪の可能性が遠ざかる。
実は、パシフィックアジア選手権は、2位以内に入れば来年3月の世界選手権に出られるという位置づけの大会だ。そして2位以内に入れず、世界選手権出場を逃した段階で、ソチ五輪出場の可能性もなくなるというのが日本男子の置かれた状況だ。
これまでのパシフィックアジア選手権で日本男子は苦戦を強いられ、世界選手権出場を逃してきた。オリンピックにも、長野を最後に出場していない。劣勢にあるにもかかわらず、トップチームが出ないのであるから、北海道協会の言うように、衝撃は大きい。
むろん、いちばんこたえているのは選手たちだろう。
今年2月の日本選手権で優勝したあと、敦賀はこう語っていた。
「みんな仕事があっても、限られた時間でしっかり練習してきました。今は女子が注目をされているけれど、男子もがんばっています。日本男子のために、今後もがんばりたいです」
次のシーズンへ向けて、力強く抱負を語っていたのを思い出す。もう一度オリンピックへ、という思いも抱いていたはずだ。
浮き彫りになった、仕事と競技生活を両立させる難しさ。
その日本選手権の決勝で、チーム北見は見事としか言いようのないプレーを見せた。特に敦賀のショットの冴えは、鮮やかだった。試合を見守る女子チームの選手らが「すごい」と歓声を上げ、「これだけやれれば世界でも」、そんな言葉も飛び出すほどだった。
あの試合ぶりを思い出すと、なおさら、残念としか言いようがない。
例年であれば、前年度の日本選手権優勝チームが日本代表としてパシフィック選手権に出場することになっていた。今回、代表決定戦を実施することにしたのは、チーム間で直前まで競わせることで、レベルの向上を図り、国際大会に臨む意図からだった。そういう経緯があるだけに、実績からして一番強いチームがいないことが、なんとも言いようがない気分にさせる。
オリンピック競技の選手の中にも、競技に専念できるような環境にある選手は増えている。一方で、職を持ち、その中でなんとか時間を捻出し、競技に打ち込んでいる選手たちも依然多い。
それがために、このような結論に至らざるを得なかったことも、やるせない。