野球クロスロードBACK NUMBER
阪神タイガースが暗黒時代に逆戻り。
和田監督に大英断を期待できるか!?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/08/08 13:05
7月に入り、坂井信也オーナー、南信男球団社長と相次いでチーム再建策を練るべくトップ会談を続けている和田監督なのだが……。
打撃成績が悪いまま、昨季同様「打ち勝つ野球」を標榜!?
虎番の記者がこう嘆く。
「今のままやったら間違いなく阪神は勝てないよ。何か改革をしないと変わらないのはチームだって分かっているでしょ。でも、それが今変えなあかんのか、来年以降を見据えて変えようとしているのかが見えてこない。そこがね、ファンからすれば一番しんどいと思うよ」
昨季は統一球の導入により大幅に攻撃力が下がったとはいえ、リーグトップのチーム打率2割5分5厘をマークし、4番の新井貴浩が打点王になるなど最低限であるにせよ打線には厚みがあった。
しかし今季は、前述したようにチームの打撃成績は低空飛行を続けたままだ。にもかかわらず、昨季と同じように「打ち勝つ野球」を標榜し、実践したところで結果などついてくるはずもない。
つまり今の阪神は、「完全に戦い方を見失っている」と周りから思われても仕方がないのだ。
一向に策を打ち出さない指揮官に、今こそ求められる大英断。
それを象徴していた試合が、8月7日の巨人戦だった。
若手選手の積極起用を周囲から囁かれるなか、和田豊監督は「主力がやらないと」と、いつも通りの布陣で試合に臨んだ。
だが、指揮官の思惑は脆くも崩れ去る。
巨人の先発、澤村拓一は序盤から不安定な投球が続く。見逃せばボール。ところが阪神打線は、チャンスとなるとことごとくボール球に手を出してしまう。その結果、5回まで10残塁。8回にようやく1点を挙げ同点としたが、守護神・藤川球児の今季初となるイニングまたぎの救援で引き分けに持ち込むのがやっと。消化不良の試合内容だった。
「引き分けでもなんでも、こういうゲームをきっかけにしていかないといけない」
和田監督は、試合後にそう言って前を向いた。しかし、今の阪神に必要なきっかけは結果ではなく、攻撃の形なのだ。
この試合で唯一、きっかけとなる形が見られたのが、同点とした8回の攻撃だった。
先頭のマートンが死球で出塁し、代走の上本博紀が初球にスチール。新井良太のバントで三塁まで進め、代打・桧山進次郎のタイムリーへと繋げた。
走者を盗塁やバントで得点圏まで進め、1本のヒットで得点する――。
日本の野球における基本中の基本である攻撃ではあるが、中日や日本ハムのように、このスタイルを徹頭徹尾貫いているチームは、常に優勝争いを演じているのが現実だ。
この回の攻撃について和田監督は、「そういうことも絡めていかないといけない」と言っていたが、チームを変えるためには機動力を徹底するくらいの大英断が必要なのだ。