ロンドン五輪EXPRESSBACK NUMBER
日本バドミントン界の悲願達成!
フジカキの偉業とオリンピック精神。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShinji Oyama/JMPA
posted2012/08/05 13:20
圧倒的に実力が上だった中国代表選手にどこまでも食い下がっていった日本代表の藤井瑞希 ・垣岩令佳ペア。会場では劣勢の日本に対し、多くの応援があった。
熱戦だった。
8月4日にウェンブリーで行なわれたバドミントンの女子ダブルス決勝。
藤井瑞希、垣岩令佳は、今大会第2シードのティアン・ティン、ジャオ・ウンレイの中国ペアと対戦し、0-2で敗れたものの、銀メダルを獲得した。日本バドミントン界では、五輪初のメダルである。
ところで、バドミントンの女子ダブルスと言えば、4つのペアが無気力試合を理由に失格となった。
サッカー日本女子代表が引き分けを狙ったことと関連付けての議論は、いまだに収まりきっていないようだ。現にロンドンにいてさえ、やたらと日本からの問い合わせがある。
少し長くなるが、その問題についてひとこと言っておこう。
引き分けのないスポーツで、勝ちを目指さないとどうなるか?
正直に言って、サッカーの引き分け狙いに違和感はなかった一方で、バドミントンの無気力試合は処分があってもおかしくないと感じた。それぞれの受け止め方が違った理由はどこにあるのか。
それは、「引き分け」があるかどうかだ。
サッカーは、決勝トーナメントはともかく、通常は勝ち負けを決するようなスポーツとしてはできていない。なので、引き分けを狙うのは戦略として当然成り立つ。もし仮に、故意に負けようとしたとしてもすぐに分かるので、議論にもならないだろう。
対するバドミントンは、引き分けというルールがないので絶対に勝敗を決しなければならない。バドミントンの試合で勝ちを目指さない、もしくは引き分けを狙うというのでは、そもそも試合形式が成り立たないのである。
もうひとつの違いは、プロかプロじゃないかという点だ。
オリンピックという概念の外にあるスポーツ、それがサッカー。
もちろんオリンピックに、かつてのような厳格なアマチュアリズムが残っているわけではない。日本の中にも、プロとして活動する五輪競技の選手はいるし、海外ではなおさらだ。
だが、そうではあっても、今なおアマチュアリズムはオリンピックに生きているのである。
“プロ”というスポーツのあり方にオリンピックが開かれているにしても、“アマチュア”へのこだわりは今なお強いし、なるべく堅持したいという意志もある。
対してサッカーはオリンピックで実施される競技のひとつとは言っても、文化的にオリンピック精神の枠外の競技なのである。