日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
協会や監督頼みのチーム再生は困難。
この惨敗を糧に選手自身が革命を!
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2010/05/25 11:50
点をとる戦術的イメージがバラバラのままのチーム内。
埼玉合宿が21日に始まって以降、戦術の確認は守備がメインだったのは分かる。カウンター対策とロングボール対策に時間を割き、この試合でも片方のサイドバックをずっと内へ絞らせていた。岡田監督が時折ピッチに出て今野に指示を出していたのは、おそらくポジショニングを含めた守備の確認だったと推察できる。
本大会を考えるなら確かに追加点を許さない試合運びは肝要。しかしながら眼前の韓国戦は、負けが許されない結果だけが求められる試合なのである。たとえどんな形であってもゴールを奪わなければならなかった。
韓国を崩すヒントはあった。
前半34分、長谷部からの縦パスを中村俊輔が遠藤保仁にダイレクトでパスを渡し、そのままダイレクトで岡崎慎司に相手の裏を狙わせたのは日本らしい攻撃だった。これを続けるための工夫が欲しかったのだが、韓国のようなチーム内の共通認識がなかった。
試合後、本田圭佑はボールを収められなかった自分のプレーに不満を示したうえで「早く(攻撃に)行きたい人とそうでない人と、まだ分かれている感じはする」と、攻撃に関する考えがバラバラであったことを証言している。
すでに協会や監督にチーム修正を頼る時期は過ぎている!!
事態は深刻だ。
初戦のカメルーン戦までもう20日しか残されていない。岡田監督はライバルに2度負けた責任を感じて犬飼基昭会長に“進退伺”を申し入れたことを会見の席で明らかにしたのだが、協会に監督交代の意思がない以上、限られた時間で何をすべきか考える必要がある。
歴代の日本代表を参考にするなら、選手全員が集まって腹を割って話し合うような時期が来たのではないだろうか。単純なようだが、その効果は確かなものがある。
加茂周監督が更迭されたとき、日本代表の面々はリラックスルームに集まってビールを飲みながら激しく意見をぶつけ合って結束を固めていたのは有名な話。2002年の日韓W杯でも初戦のベルギー戦を終えて、風呂場で選手たちが集まってディフェンスラインの約束事を決めている。ジーコジャパンのときも、アジア最終予選のバーレーン戦を前にして意見をぶつけ合った“アブダビの夜”がある。いずれも戦術の部分だけでなく、気持ちを「共有」できたことが大きかった。
監督からの打開策を待つよりも、選手たち自身が立ち上がらなければならない。
誰が声を上げたっていい。
今こそ、意見をぶつけ合う、その時である。