日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
協会や監督頼みのチーム再生は困難。
この惨敗を糧に選手自身が革命を!
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2010/05/25 11:50
ベストメンバー同士の日韓戦など、そうそうない。
ライバルとして歩んできた歴史を踏まえれば、W杯直前に組まれたこのテストマッチは両チームにとって大きなリスクでもあった。だが、激しい戦いになればなるほどケガ人が出る可能性やチームへのダメージも懸念されるなか、敢えてこのタイミングでマッチメークされたのは、勝利のために死力を尽くした戦いから得るものを両チームが期待したからである。
「非常に大きな意味を持つ試合。2月の東アジア選手権で韓国に負けているし、我々はプライドを持って戦わなければならない」
試合前日、岡田武史監督はこう決意を語っていた。内容うんぬんよりも、結果にこだわるべき試合だ、という認識はチーム全体で共有していたはずだった。
しかし結果はどうだったか。
勝利に対する執念、球際の激しさ、チームの一体感……あらゆる面でライバル韓国に完敗だった。0-2という結果は、至極真っ当なスコアだった。
日本代表に気を遣ったパク・チソンのコメント。
この日、先制点を挙げたパク・チソンは試合後のミックスゾーンで、ライバルへの対抗意識がモチベーションの背景にあったことを口にしている。
「韓日戦はすごく大事な試合。我慢しながらでもいいプレーをしていこうと思った。日本代表はディフェンスでメンバーが欠けていたからベストではないと思うが、僕が日本でプレーしていたときよりも少しレベルが下がったのではないか」
パク・チソンの勝利への執念は凄まじかった。日本がヘディングでクリアしたボールを味方がつなげ、そこに走りこんで長谷部誠や今野泰幸の守備を振り切って奪った先制点も見事ではあったが、1度でボールを奪えなければ2度目もチャレンジに向かう守備のしつこさには、スタンドからも驚きの声が上がったほどである。
韓国のパフォーマンスも決して高いとは言えなかった。前半飛ばしたために、後半は明らかに運動量が落ちた。だが、彼らはいかに勝利するか、共通認識を持っていた。日本の持ち味である前線からのプレスを回避するために、ディフェンス陣はワイドでボールを回し、中盤においてはブロックをつくり、ボールが入ったところで一気につぶしにかかる。そして愚直にセカンドボールを拾い、チャンスとみるや縦パスを試みる。日本をリスペクトした上でその戦術を研究し、しっかり欠点をついてきた。90分間通して約束事を徹底できたゆえの勝利と言えた。
リスクを冒してでも点を奪いにいく姿勢が無い岡田ジャパン。
翻って日本はどうだったか。
「自分たちのサッカーをやる」というだけで、韓国をリスペクトして対策を十分に練っていたのかは疑問だ。
加えて球際の弱さ、ミスの多さはもちろんのことながら、最も歯がゆかったのはリードを許した展開で、リスクを冒してでも点を奪いにいく強い姿勢が試合の終盤に入るまで見られなかったことだ。中村憲剛が投入されて残り10分ぐらいになってかなり前がかりになるのだが、遅すぎた感は否めない。