スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
スペインは、若くナイーヴだった……。
金メダル候補と言われることの難しさ。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2012/07/27 12:25
何度もドリブル突破を図る永井に対し、たまらずイニゴ・マルティネスがファウルをしてレッドカード。先制された動揺からか、スペインはこのシーン以外にも何度もラフプレーやミスを繰り返した。
再び金メダルに挑む中村美里のたくましい姿を見て……。
オリンピックという場は不思議なもので、金メダルが有力な選手でもナイーヴであることから自由ではあり得ない。
たとえば、柔道。お家芸だけに、選手たちが引き受けるプレッシャーは想像を絶するものがある。
4年前、19歳でオリンピック代表となった女子52キロ級の中村美里にとって、初めての大きな国際大会がオリンピックだった。
「先輩方ばかりで、自分は後ろをついていくようなものでした」
戦い方がまだまだナイーヴだった。技は限られ、結果は3位。メダル獲得とはなったが、それでも「金メダルしか考えていなかったので」とコメントし、柔道家らしいところを見せた。
あれから4年。世界選手権でも二度、頂点に立った。もはやナイーヴな面は、中村からは見られない。金メダル候補の筆頭といっていい。
しかし、柔道の神様は中村に最後の試練を課した。初戦で、北京オリンピックで敗れた相手、アン・グムエ(北朝鮮)との対戦が濃厚となった。
面白いじゃないか。もうナイーヴになる必要はない。自分らしく、戦ってくれ。