ロンドン五輪EXPRESSBACK NUMBER
陸上人生のハイライトをロンドンで!
攻めの走りに見る福士加代子の矜持。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2012/07/20 10:31
日本女子長距離種目でのオリンピック3大会連続出場は、弘山晴美と並び史上2人目の快挙。ロンドンでは、福士らしい笑顔を見せてくれるのか。
積極的なレース運びは第一人者であることの矜持。
福士の走りと言えば、飛び出して先頭に立つか、あるいは先頭集団に位置して、常に前をうかがう積極的なレース運びが特徴だ。
それは海外の速い選手に伍していきたいという意志の表れだ。
長距離種目は、近年顕著になってきたマラソンでの傾向に先駆けて、以前から東アフリカ勢の選手たちの速さが際立ち、世界の壁が厚い。アフリカの選手たちの特に優れているところは、スプリント能力だ。その部分で劣る以上、後方に待機し、機を見て抜いていくというレース展開はできない。だからこその積極策であり、世界の壁を破ろうと挑み続けてきたのが福士である。ふだんはどう振舞っていようと、挑戦する志がうかがえる。それもまた、第一人者であることを感じさせる。
五輪の大舞台で、今度こそ心から納得のいくレースを。
ロンドン五輪は、マラソンの代表にはなれなかったが、10000mで、代表入りの条件となる派遣標準記録のAをクリアし、同種目で出場する。
6月の日本選手権の10000mで2位になったあと、福士はロンドン五輪への抱負を尋ねられると、こう語った。
「目標はとりあえず面白いレースをできればいいな、と思っています。前のほうをちょろちょろっとですよ」
いつもの福士らしい言葉だった。
国内では常にトップクラスに位置し続けてきたが、キャリアのハイライトは、と問われたとき、ここだ、と言えるポイントはそう簡単には思い浮かばない。国際大会では、アテネのときの故障、'07年の世界選手権でレース中に靴が脱げるなど、アクシデントもあり、何度も辛酸をなめてきた。
だからこそ、オリンピックという大舞台で、今度こそ、心から納得のいくレースを。
そのとき、ほんとうの笑顔が見られるのかもしれない。