ロンドン五輪EXPRESSBACK NUMBER
東アフリカ勢が席巻する女子マラソン。
日本の秘策は“チーム戦術”にあり!?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byPOOL(NIKKAN SPORTS)/AFLO
posted2012/07/23 10:30
昨年11月の横浜国際女子マラソンで壮絶なデッドヒートを繰り広げた木崎良子(左)と尾崎好美。ロンドンでは、重友梨佐を含めた3人の共闘が見られるのか。
オリンピックの数ある種目の中で、注目の高いもののひとつと言えば、女子マラソンである。
これまでの大会で築いてきた実績が、関心を呼ぶ要因となっている。
有森裕子が1992年のバルセロナで銀メダル、1996年のアトランタ五輪では銅メダルを獲得し、2000年のシドニーでは高橋尚子、2004年のアテネでは野口みずきが金メダルを獲得。それぞれの大会で「顔」になったと言えるほど、脚光を浴びてきた選手たちだ。
だが、ロンドン五輪では、様相が異なる。北京では野口の欠場、土佐のアクシデントなどで不本意な結果に終わった日本勢は、今回も苦戦を強いられると予想されている。
その原因は、ケニアとエチオピアの選手たちの台頭だ。男子はすでにこの10年内外、東アフリカ勢が世界を席巻してきたが、女子でも同じような傾向が生じている。象徴的なのは、昨年の世界選手権でケニアの選手たちが表彰台を独占したことだ。ひとつの国の選手が1位から3位を占めるのは、男女を通じて初めてのことだった。
東アフリカ勢に対抗するために異例の合同合宿を敢行。
今年に入ってからも、その流れは変わっていない。なにしろ、世界ランキングのベスト10は、ケニアの選手が5名、エチオピアの選手が5名と両国で占めている。タイムを見ると、2時間18分台が2名、2時間19分台が4名、2時間20分台が4名とハイレベルであることが分かる。
対する日本からは、尾崎好美、重友梨佐、木崎良子の3名が出場するが、その中でのベストタイムは、重友が今年1月の大阪国際女子マラソンでマークした2時間23分23秒である。持ちタイムの時点で開きがあるのに加え、脅威なのは、東アフリカの選手たちのスプリント能力だ。昨年の世界選手権でも、スローペースで進みながら、終盤、東アフリカの選手たちは一気にペースアップ。日本の選手はついていくことができなかった。5位入賞した赤羽が、「思っていた以上でした」というほどのスピードだった。
力量に差がある中、では、どういう対策を採り、戦おうと考えているのか。
それを表しているのが、6月中旬から7月の頭にかけて、アメリカのフラッグスタッフで実施した合同合宿だ。
マラソンは個人競技であり、ふだんはライバル関係でもあることを考えれば、異例のことだ。実際、過去にこうした試みは行なっていない。