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<ロス五輪以来の表彰台を目指して> バレーボール女子日本代表 「メダルへのラストピース」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byMichi Ishijima
posted2012/07/07 08:01
目標を失ったかに見えた、アメリカ戦で発揮した“強さ”。
11月18日、代々木第一体育館は1万2000人の大観衆の熱気で満ちていた。この日も日本はリベロの佐野優子と竹下を中心に拾いまくる。ブロックされても何度でもフォローし、レフトの木村、江畑に託した。2人は技ありのスパイクで打ち勝ち、29対27で第1セットを制した。
セットカウント3-0または3-1で勝てば優勝のアメリカは、元高跳び選手のデスティニー・フッカーが日本のブロックの上からスパイクをたたきこむが、単発に終わり、勝負どころで好レシーブからの攻撃を決めた日本が終始、流れを握った。マッチポイントで、木村のスパイクがアメリカのブロックを弾いた。ボールがコートサイドに落ちるか落ちないかの刹那、ベンチから飛び出してくる選手の姿を見て、勝利を確信した観客は、地鳴りのような歓声で選手たちを包んだ。
アメリカにストレートで勝利し、木村は安堵の表情を浮かべた。
「ワールドカップ最後の試合だったので、勝って終われてよかった。大会の最初はまだチームになりきれていなかったけれど、個々がいろんな経験をして、試合を重ねるごとにチームが本当に団結できたのでよかったです」
日本は4位で大会を終えた。3位中国と同じ8勝3敗だが、勝ち点で2ポイント及ばなかった。それでも、主力2人を欠く中ブラジル、アメリカに勝った自信と、新鍋、岩坂という若手が大舞台を経験したことは収穫だ。
22歳の江畑の成長もチームにとって大きい。代表初選出だった'10年は調子が日替わりだったが、今大会は高いレベルで安定していた。木村の対角にもう一本、しっかりとした柱が立ったことで、木村が後衛に下がってもチームの攻撃力が落ちなかった。
メダルを目指すには、“つなぐバレー”だけでは足りない!?
ただ、五輪でメダルを目指すには、全員で拾ってつないでエースに託すというパターンだけでは難しい。ラリー中でもセンターなど他の攻撃が存在感を増せば、相手にとってより戦いにくいチームとなる。また眞鍋は、勝負どころで崩れることのあったサーブレシーブを一番の課題に挙げた。
日本は'12年5月、改めてロンドン五輪の出場権をかけて、アジア予選兼世界最終予選を戦う。しかし彼女たちにとって、もう五輪は出るだけで満足できる場所ではない。
2度の五輪を経験している竹下は、アメリカ戦の鮮やかな勝利に浸る記者会見場の空気を引き締めるかのように言った。
「怪我人が出たりしましたが、日の丸を背負っている以上、勝ちにこだわってやらなければいけない。やはり結果を出したかったというのが正直なところです」
勝利への、メダルへの飢餓感を、7月、ロンドンの舞台にぶつけるつもりだ。