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西武・涌井の抑え転向は成功なのか?
リリーフ投手に必要な条件を考察する。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/06/27 10:30
6月23日、西武の涌井秀章はオリックス戦で9回に救援し、復帰後初セーブを挙げて渡辺久信監督(左)と勝利のタッチを交わす。
成功したリリーフ投手の“履歴”から適任者を考える。
各球団はリリーフ投手の再編を迫られているわけだが、どういう投手がリリーフに向いているのか、まずリリーフ投手の“履歴”を考えてみた。
岩瀬仁紀(中日)、浅尾、山口鉄、馬原、武田久は入団当初からリリーフとして起用され、西村、久保、藤川、薮田、山口俊(DeNA)、岸田護、平野佳寿(ともにオリックス)は先発の適性が試されたのちにリリーフに転向している。最初からリリーフで起用されている投手は大学ないしは社会人出身、先発経由は高校卒、というくらいの特徴はあるが、絶対的な特徴ではない。ただし、球団によっては最初からリリーフタイプと決めてドラフトで指名する球団と、入団後に適性を見極めてリリーフに転向させる球団と二通りある。
巨人、DeNA、西武、オリックス、ロッテは入団後に適性を見極めようとする傾向があり、中日、阪神、広島、ヤクルト、ソフトバンク、日本ハム、楽天は最初からリリーフ投手に適性があると読んでドラフトで指名し、そのままリリーフに収まるケースが多い。前者で最もその傾向が顕著なのが西武だろう。
西武の新守護神・涌井にリリーフ投手の適性はあるか?
伝統的に先発・完投を重視するチームで、東尾修、工藤公康、渡辺久信、西口文也、松坂大輔という先発の大看板は生まれても、リリーフ投手は'80年代の森繁和、'90年代の潮崎哲也、杉山賢人、鹿取義隆の通称“サンフレッチェ”と、'00年代の森慎二、豊田清のコンビくらいしか思い浮かばない。
豊田は先発からの転向、昨年22セーブを挙げた牧田和久も先発からの一時的な転向で、外国人を抑えに充てることも他球団にくらべて多い。首脳陣に抑えを定着させる意図がないのかと思うくらいだ。そして、現在は自他ともにエースと認める涌井秀章が抑えを務めている。この涌井にリリーフ投手の適性は果たしてあるのだろうか。
当初、私は西武首脳陣の泥縄的な配置転換に腹を立てた。しかし、6月22~25日の対オリックス4連戦を見て、ファンの涌井に対する期待の大きさを知り、見方が変わった。
「○○に代わりまして、ピッチャー涌井」のアナウンスがかかると、スタンドが大騒ぎになるのだ。そのどよめきの中、登場曲『Tomorrow never knows』(ミスター・チルドレンの代表曲)のスローテンポとともに悠然とピッチング練習を始める涌井。そして、ざわめきはいつまでたっても収まらない。