EURO大戦2012BACK NUMBER
盤石のドイツに声を失わせた奮闘。
苦境ギリシャの晴れがましき敗戦。
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/06/23 12:30
バドシュトゥバー(ドイツ)のヘディングに身体を寄せるパパスタソプーロス(19番)とサマラス。ドイツの猛攻を受けながら、ギリシャは最後まで2004年欧州王者の意地を見せ続けた。
周辺国からの移民がドイツ代表に新しいカラーを加える。
悪役に徹しきるギリシャ人の面構えは素晴らしかった。だが終わってみれば、やはりドイツは強かった。
55分に追いつかれたときは、「またギリシャ人のパーティが始まるのか」という不吉な予感も漂ったが、6分後にケディラが勝ち越しゴールを奪うと、ドイツは一気呵成に攻め込んだ。クローゼ、ロイスが次々とゴールネットを揺さぶり、4ゴール。順当勝ちといっていい。
いまのドイツには、ほとんど隙が見当たらない。
とにかく力強い。それが従来のドイツだったが、いまの彼らは力強い上に柔軟なテクニックも兼ね備えている。この日はフィニッシュに精度を欠き、勝負は終盤までもつれたが、それでもゴール前に人垣を築いたギリシャを緩急自在のパス回しで右へ左へと揺さぶった。ゴメス、ポドルスキ、ミュラーを温存するという盤石ぶりだ。
強くて柔らかいドイツ。だれが出てきても質が落ちないドイツ。
この素晴らしいドイツ代表を生み出したものは何か。国が大きくなったことは、その大きな要因といえるはずだ。1989年、ベルリンの壁が崩壊し、ドイツは再統合された。ソ連やユーゴスラビア、チェコスロバキアが次々と分裂し、小さくなったのに対して、ドイツだけが大きくなった。元々強かった(西)ドイツが、さらに多くの優秀な人材を抱えることになった。
経済的にも強いドイツには、周辺各国から次々と移民が流入している。ポドルスキやクローゼはポーランド移民であり、エジルもトルコの血を引く。さらにはケディラ、ボアテンクも。彼らが強いドイツに新しいカラーを加えている。
通貨ユーロの屋台骨を支えるドイツが、ユーロの頂点にまた一歩前進した。