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Jにいながら欧州の感覚を養う方法。
酒井高徳にみる意識改革のヒント。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byItaru Chiba

posted2012/05/04 08:01

Jにいながら欧州の感覚を養う方法。酒井高徳にみる意識改革のヒント。<Number Web> photograph by Itaru Chiba

昨年末、岡崎慎司も所属するドイツの名門シュツットガルトに期限付きで移籍した酒井。わずか1カ月でレギュラーを獲得し、地元紙のコラムに「我々は今すぐにでも彼を帰化させるべきだ」と書かれるほどの活躍を見せている。

「日本はテンポが、いい意味でも悪い意味でも遅い部分がある」

酒井高徳(シュツットガルト)

 はじめに断っておくと、この酒井高徳のコメントは3月9日のシュツットガルト対カイザースラウテルン戦後のミックスゾーンで聞いたものだ。「ブンデスリーガに来てから、ドイツ人の部分が出てきたのでは?」という質問に対しての回答の流れである。決してJリーグを批判するとか、問題視するという意図で発言されたものではない。それをあらかじめ確認しておきたい。

 ただし、酒井高徳の「テンポがゆっくりしている」という指摘は、Jリーグにとって大きなヒントが隠されているように思う。Jリーグにいながらにして、プレースタイルを激変させられるかもしれないことへの。

 では、あらためて酒井高徳とのやりとりをきちんと書いておきたい。カイザースラウテルン戦の後、こんな質疑応答をした。

「こっちのリーグで前に行くというアグレッシブさが出た」

――ドイツに来てからすごく自己主張しているように見える。五輪代表のとき以上にまわりに指示をしている印象を受けた。

「ディフェンスとしてしゃべらないとまずい場面も出てくるし、チーム内にとけ込むのもそう。プレーをわかってもらうためにも、言葉を早めに覚えたほうがいいかなと思ったんです。もともと母親がドイツ人というアドバンテージがあったので、いろいろな単語が聞き取れるんですけど、簡単なサッカー用語はもう話せるようになった。普段から細かい部分を他の選手と話しているので、お互いのプレーをわかっていると感じますね」

――これは先入観かもしれないけれど、ドイツ人の部分が出てきているように見えた。

「そうですね。こっちのリーグにいると、より気持ちが出るというか。前に行くというアグレッシブさが出たと思いますね。日本はどうしてもテンポが、いい意味でも悪い意味でも遅い部分がある。それがいいときもあるしね。逆にドイツはそれがない。ぐっと前に行って、試合展開が速い。そういう環境にいるのが、今の自分にとっては大きいなと思います」

【次ページ】 酒井が仕掛けている、日本的テンポ・マネージメント。

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