濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
格闘技ビジネスの雄、戸井田カツヤ。
「トイカツ道場」成功の秘密を探る。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2012/05/05 08:00
経営しているジムで指導する戸井田カツヤ(写真右端)。これまでの格闘技ジムとは違い、練習中でも会員の笑顔が絶えない、楽しい雰囲気作りに努めている。
ブームは去っても潜在的な格闘技ファンは多数いる。
「夏までに痩せたい」、「進学や引越しを機に」といった季節ごとの傾向に関係なく、常に一定の入会者がいるというトイカツ道場。日本で格闘技ブームが去ったことも、影響はないという。
「今ブームかどうかじゃなく、一度ブームになったという歴史が重要なんだと思います。PRIDEやDREAMで総合格闘技という競技が一般に認知されたことで、“格闘技をやってみたい”“どうせ体を動かすなら格闘技がいい”と思っている人は確実に存在します。なので、その人たちにどうアピールするかを考えればいいんです。UFCの日本大会も満員になったし、潜在的な格闘技ファンはたくさんいるんですよ。このマーケットも、まだまだ捨てたもんじゃない」
経営者、戸井田カツヤの見据える格闘技マーケット。
格闘技のジムは“強い選手を育てる場所”だと思われがちだが、戸井田が見据えるのはライトに格闘技をやりたい人々。道場では経営者に徹する彼は、指導も週に3回、計3時間しか行なっていない。
トイカツ道場なんだから、もっとトイカツさんに教わりたい。そんな会員も多いのでは、と尋ねると、戸井田は笑いながらこう答えた。
「人気ないですから、俺。昼間、サンドバッグを叩いてたら会員さんに『夜のお仕事の方ですか?』って聞かれたくらいで。自分を知らない会員さんがいるのはちょっと悲しいことですが、もう自分の知名度で集客していないということは、経営的にはいい傾向だと思います」
24時間営業にし、すべての指導をインストラクターに任せ、自分の担当クラスをゼロにすることが目標だと戸井田は言う。道場での彼は、選手でも指導者でもなく、経営者として、格闘技ビジネスとそのマーケットを捉えているのだ。