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モロジーニの突然死が鳴らす警鐘。
セリエの選手たちは働き過ぎなのか? 

text by

弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2012/04/27 10:31

モロジーニの突然死が鳴らす警鐘。セリエの選手たちは働き過ぎなのか?<Number Web> photograph by AFLO

リボルノと、かつてモロジーニが在籍していたビチェンツァは、彼の背番号25番を永久欠番にすることを決定。またモロジーニが下部組織で所属していたアタランタはスタジアムの南側ゴール裏スタンドの名称を「ピエルマリオ・モロジーニ」とすると発表した。

 イタリアの全リーグ戦開催が中止された4月15日、ウディネーゼのベテランFWにして主将のディナターレは、TVカメラの前で切々と訴えた。

「今は試合数が多すぎる上に試合ごとの間隔が短すぎる。フィジカル・コンディションを回復させる時間がないのは非常に危険だ。どこかで身の安全を考えるべきだ」

 前日14日、セリエB・リボルノのMFピエルマリオ・モロジーニが、ペスカーラ戦の試合中に突然死した。

 享年25歳だった。

 各年代代表に選ばれ、ユース時代から数えて延べ7チームでプレーしてきたモロジーニには、セリエA・Bを問わずイタリア中に知己がいる。その死が与えた影響は各チームの選手たちやスポーツ医療界など多方面に及んだが、とりわけ7年にわたって保有権を持ち続けたウディネーゼが受けた衝撃は大きかった。

 弟分を亡くし慟哭したベテランFWは、さらなる悲劇を避けるため、現在の過密日程へ疑問を投げかけたのだ。

選手の身体に過酷な負担を強いる現代のサッカー。

「私は、選手たちの肉体的負担が著しく重いとは思わんね。他のスポーツに比べてサッカーの練習量は少ない」

 選手の過労はない、と反論するのは、名将ズデネク・ゼーマンだ。今季ペスカーラを率いて超攻撃サッカーを展開する彼は、モロジーニの死の現場にも敵将として居合わせた。「適切な指導さえあれば、どんな選手でも年間45試合は全力プレーできる」が持論で、ローマの監督だった'98年当時、カルチョ界に蔓延していたドーピング疑惑を告発した反骨漢である。

 ただし、薬物や猛練習が幅を利かせた時代はとうの昔に終焉している。

【次ページ】 プラティニが年間56試合をこなした時代との違いは?

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