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プレミア今季最大のサプライズ!
“スワンゼロナ”快進撃の秘密。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2012/04/27 10:30

プレミア今季最大のサプライズ!“スワンゼロナ”快進撃の秘密。<Number Web> photograph by AFLO

中位以下のクラブから着実に勝ち点を重ねるのはもちろん、マンCやアーセナルから大金星を勝ち取るなど上位陣との対戦成績も優秀。まさに台風の目となった。

 その名も“スワンゼロナ”。バルセロナにあやかり、メディアがスワンジーに与えたニックネームである。

 但し、今季開幕前の時点では、パスサッカーにこだわる昇格組に対する、冷やかし半分の別名でしかなかった。

 サッカーよりもラグビーが盛んなウェールズの弱小チームは、100年に及ぶクラブ史の中で、今季が初のトップリーグ参戦だ。その資金力は、言うまでもなくプレミアリーグ最低。昨季のチームには、週給にして約15万円という待遇の1軍選手もいた。これは、プレミア強豪の主力選手の100分の1程度という水準だ。2部リーグ3位で、プレーオフ経由で昇格を果たしたスワンジーは、今季の降格候補筆頭に挙げられていた。

 ところが、いざシーズンが始まってみると、“スワンゼロナ”は純粋な賞賛を意味する異名へと変った。

 スワンジーは、降格回避どころか、中位狙いさえ可能な順位でシーズン最後の1カ月を迎えている。しかも、結果重視の守備的な姿勢でポイントを稼いだわけではない。マンチェスターCのロベルト・マンチーニ監督が、「国内最高のサッカーをする」と評しているように、上位勢も舌を巻く内容で結果を残してきたのだ。

モウリーニョの薫陶を受けたロジャーズ監督の指導手腕。

 就任2年目のブレンダン・ロジャーズ監督には、まだ39歳のプレミア1年生監督でありながら、今季の最優秀監督に推す声が強い。ショートパス主体のスタイルは、3年前まで指揮を執っていたロベルト・マルティネス(現ウィガン監督)によって、その下地が築かれた。続くパウロ・ソウザ前監督も、同スタイルを踏襲した。

 しかし、スワンジーのパスサッカーを、プレミアでも通用するレベルに昇華させたのはロジャーズに他ならない。

 トップチームの監督歴は3年弱と浅いが、指導者としての腕前は、ジョゼ・モウリーニョ(現R・マドリー監督)のお墨付きとして、以前から注目されていた。モウリーニョと同じく、若くして指導者に転身した北アイルランド人は、2004年当時チェルシーを率いていた「選ばれし者」によって、レディング(2部)の育成担当から、チェルシーのユースチームの監督としてヘッドハントされ、その2年後には2軍監督に抜擢された。

【次ページ】 「教育の場」での徹底指導で埋もれた能力を引き出す。

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