セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
モロジーニの突然死が鳴らす警鐘。
セリエの選手たちは働き過ぎなのか?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2012/04/27 10:31
リボルノと、かつてモロジーニが在籍していたビチェンツァは、彼の背番号25番を永久欠番にすることを決定。またモロジーニが下部組織で所属していたアタランタはスタジアムの南側ゴール裏スタンドの名称を「ピエルマリオ・モロジーニ」とすると発表した。
プラティニが年間56試合をこなした時代との違いは?
今から30年前、ユベントスとフランス代表に君臨していた“将軍”プラティニ(現UEFA会長)も、'82-'83年シーズンには56試合もプレーしているが、30年前と現在では選手たちが置かれた状況は大きく異なる。選手の行動範囲はより広くなり、プレーの質も量も大幅にアップした。
攻守に多重プレスが普及した今、1試合あたりの走行距離は飛躍的に増え、90分間で10km超を走破する選手は今や珍しくない。
テレビ中継優先の過密日程が疲労を蓄積させる一要因。
現在の欧州では、テレビ放映用に多様化した変則開催が基本になっている。
代表戦との兼ね合いでリーグ戦の水曜開催も珍しくなくなり、セリエAにも金・月曜開催やランチタイム・ゲームが定着した。
特に今季はカレンダー変更が相次ぎ日程の過密化がより進んだ。これは老朽化が進む地方スタジアムや脆弱な交通インフラが、突然の降雪や豪雨といった悪天候に十分な対応ができないイタリアならではの事情に起因している。
また、欧州カップ戦を火・水・木曜のいずれかで戦うビッグクラブは、注目度の高さから国内リーグ戦の大半が20時45分試合開始のナイトマッチになる。
移動にかかる膨大な時間もチームのスケジュールを圧迫している。アウェーゲームの場合、試合後チャーター機で帰れても選手が自宅に着くのは午前3、4時以降。消耗から回復する休養を必要とする一方で、練習の時間も当然確保しなければならない。トッププレーヤーになるほど試合数は増え、それに比例して心理的・肉体的負担も蓄積する。「疲れがまるで抜けない。引退も考えた」と訴えた34歳のディナターレの嘆きも杞憂とはいえない。
モロジーニがプレーしていたセリエBもまた過酷だ。肉弾戦重視の22チームによる長丁場では、8日間で3試合の強行スケジュールもざらにある。若かったモロジーニにとっても決して楽ではなかったはずだ。