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中畑監督の精神もギリギリだ!!
でも、ベイスターズが変わる理由。 

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

PROFILE

photograph byHideki Sugiyama

posted2012/04/15 08:01

中畑監督の精神もギリギリだ!!でも、ベイスターズが変わる理由。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

連敗しても、なんとか選手やファンの気持が折れないように頑張る中畑清監督の男気は、まさに「演歌の心」。「忍」の一文字である。

敗戦を選手のせいにせず、ファンに謝り続ける中畑監督。

 負けても負けても敗戦を選手のせいにせず、スタンドの観客に向けても「ごめんなさい」「申し訳ない」と謝る中畑監督。

 自らが先頭に立って、明るさを失わず、チームに諦めない姿勢を示していく姿には、本当に頭が下がるものだ。

「中畑さんはどんな時でも誰の前でも変わらない、あのまんまの人。周囲の空気を変えてくれる本物のスーパースターってやつですよ」

 選手・コーチからそんな話が漏れ聞こえてくる。ああ、この人はやっぱり本物だ。

 来る日も来る日も前向きなコメントで偉いなぁ……なんて感心していたのだが、開幕から同じく低迷する巨人軍を抜いて最下位に落ちた8日の試合後に夕刊フジが拾ったコメントを見てひっくり返った。

「最下位なんてクソ喰らえ! うんこちんちん!」

 ……うんこちんちん、である。ギリギリだ。プロ野球80年の歴史の中でこれほどまでサイテーな指揮官のコメントはないだろう。どこをどう汲んでもそれ以上にも以下にも捉えようがない。

 しかし、この切迫感。明るい材料が何も見えない中で、何があっても下を向かず、無理矢理にでも明るさを絞り出そうとするこの生の感情が……今や小学生すらニコリともしないであろう、この狂気に満ちたフレーズに乗り移っているではないか。弾尽き矢は折れた。残ったものはうんことちんちん。

清の中で何かが壊れた……だが、何かを動かしたことは間違いない!

 ……ああ、清。

 このなり振り構わず現状を打破しようとあがく姿勢。

 これが続いていけば世界は変わる。

 きっと、昨年尾花監督が「だっふんだ」とやっていれば、チームの結果も変わっていた。別のものがいろいろ壊れたことは間違いないが、何かを動かしたことは間違いない。以前、高木豊ヘッドが「弱いチームはベース持って走るぐらいのことをしないと」と言っていたが、それぐらいの根本的な覚悟は必要だ。

 で、ここまで負けているのに全然悪い気がしないのは、チーム防御率全球団中2位の2.08なんて数字や高崎やひちょりの個人成績もあるのだろうが、それ以上に勝敗の結果以上に去年までと確実に違う空気を感じているからに他ならない。

【次ページ】 球団、中畑監督、選手、そしてファンも我慢比べになる。

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