MLB東奔西走BACK NUMBER
5失点を“期待”に変えた初登板。
ダルビッシュの110球が物語るもの。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byAP/AFLO
posted2012/04/11 11:55
イチローには4打数3安打と打ちこまれたダルビッシュ。打たれた理由として「イチローさんはもともとすごい選手。今日は綱渡りの投球だったので、誰に打たれても当然」とコメント。ツイッターではファンの祝福メールに対して「あんなんでおめでとう言わないでください」とつぶやいていた。
ある選手と酷似する……野球に対する極端に厳しい姿勢。
「彼は次元の違うところで野球をやっていますからね。間違いなくやってくれると思います」
昨年末から年明けまで日本、アメリカで様々な現役選手や野球関係者と会い、彼らとダルビッシュの話をすると、一様に同じ内容の言葉が返ってきたのだが、自分の中では多少のデジャブを感じていた。
まさに2001年に海を渡って来る前に聞いた、イチロー選手の評価と寸分違わぬものだったからだ。
2人に共通するのは他人を寄せ付けない飽くなき探求心だろう。メジャーに移籍するまで日本球界のトップに君臨しながらも、そこに満足せず更なる極みに向かおうとした2人の姿勢はまさに瓜二つで、たぶん彼らが目指していくものに完成形などないのだろう。それを裏づけるように、メジャーに来てもイチローは同じ姿勢を貫き通しているし、今後ダルビッシュも同じように道を歩んでいくと信じている。
それと同時に、昨年まで所属していた日本ハムの吉井理人投手コーチが、自身のブログでプレートを踏む位置が変わったと指摘するように(コーチの指摘通り、オープン戦途中からプレートの三塁側から一塁側を踏むようになった)、早くもダルビッシュの中で変化が生じている。イチローの打撃フォームがそうであるように、メジャーを体験すればするほどこれからもダルビッシュの投球は変化、進化していくはずだ。
今シーズンの成績のみならず、ダルビッシュがメジャー球界でどのように成長していくのかも見逃してはならない。