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イチローと松井秀が開幕早々苦悩中。
マリナーズとエンゼルスの弱点とは?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKYODO
posted2010/04/17 08:00
開幕前にはお互いにチームの好調を認め合っていたイチローと松井。序盤戦のつまづきをふたりの打棒で取り返して欲しいところ
アメリカン・リーグ西地区で、優勝争いをするであろうと思われていたロサンゼルス・エンゼルスとシアトル・マリナーズが開幕ダッシュに失敗してしまった。
まだ開幕して2週間ほど。試合の数を考えれば16分の1。まだまだ案ずるほどのことでもない。
ただ、この時点で両軍が持つ弱点は浮かび上がっている。今回は打線について数字上で分析し、今後、テレビで観戦するときの手助けになればと思っている。
エンゼルスの持ち味は「辛抱強さ」のはずだが……。
エンゼルスの監督、マイク・ソーシアは選手の「役割」ということをきっちり決めるタイプの監督だ。
私が取材で試合前の打撃練習を見ていた時のこと、ホームランを打った選手がいた。ところがソーシアはその選手に罰金を科していた。
「お前の役割はホームランを打つことじゃない。球を転がすことだろ」
笑いを浮かべてはいたが、その後、しっかりと罰金は徴収したという話だ。
ソーシア野球の特徴は1、2番コンビにある。昨シーズン、エンゼルスの地区優勝の原動力になったのは、1番フィギンス、2番アブレイユが徹底的に四球を選ぶタイプの選手だったからだ。
昨シーズンの1、2番の四球の数をマリナーズと比較してみよう。
●エンゼルス
フィギンス 101個
アブレイユ 94個
●マリナーズ
イチロー 32個
グティエレス 46個
マリナーズの2番は固定化できなかったが、四球の多いグティエレスを選んで比較してみた。
これが両軍の野球の違いだった。ソーシアは1、2番が球を見極めることを徹底させていた。フィギンス、アブレイユが塁に出ることで相手投手にプレッシャーをかけ、3番ハンター、4番ゲレーロがランナーを返すパターンが出来あがっていたのだ。
マリナーズのGM、ジャック・ズーエンシックが凄腕なのは、エンゼルスの打線の火付け役であったトップバッターのフィギンスと契約を結んだことである。
エンゼルスの得点力を奪っただけでなく、それをわが物としてしまったのだ。
だからこそ、この2チームの戦いにアメリカでは注目が集まっているのだ。