ロンドン五輪代表、最大の挑戦BACK NUMBER
五輪代表、マレーシア戦勝利の意味。
再確認した、自分たちの誇りと戦法。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/02/23 12:10
サイドバックの酒井宏樹は得意のクロスボールを何度も入れていた。関塚監督が指示したポイントのひとつ「サイドを使った攻撃」という指示は、見事に貫徹された
シリア戦と違い、お互いに補完し合うプレーもできた。
戦い方をチーム全体で明確にした結果、ゴールが生まれた。
それを試合を通して徹底し、最終的なゴールまでを意識した選手たちには、それぞれに犠牲心も生まれていたように思う。実際、様々な局面で味方をフォローするサッカーが出来ていたのだ。酒井が上がったサイドバックの裏のスペースをすぐに山口螢がケアするなど、気の利いたプレーがここかしこに見られた。
「今日、自分が点を取りたいと思って前に出れたのは、螢クンがいたから。螢クンが自分が上がった後のスペースをカバーしてくれなかったら、あれほど上がれなかった」
酒井は試合後にそう感謝の念を語ったが、シリア戦の時はどこか希薄だったお互いを補完する関係がこの試合では出来ていたのである。
関塚監督が攻撃のポイントをわずか2つに絞った結果の勝利。
連係がうまく行ったことが見事にゴールに繋がった。
前半35分の先制点となった酒井のゴールは、原口が東慶悟のスルーパスに反応した後も、サボらずに酒井が原口をサポートし続け、しっかり詰めていたから生まれたものだ。
4点目のゴールは、扇原のミドルシュートをGKが弾いたのを齋藤学が決めたものだが、「こぼれるかもしれないと思っていた」(齋藤)と予測し、シュートをフォローする動きから生まれたゴールだった。
「チーム全体が得点への意識を持ち、それが結果に表れた」
試合後、関塚監督は4-0の勝利をそう振り返ったが、シンガポール合宿からゴールへの意識を高め、スカウティングを活かした練習が見事にハマったことに満足そうであった。
今回の勝利は、監督が攻撃のポイントを2つに絞ったことが実際大きかったと思われる。選手は複雑な戦術であれこれ悩むことなく、その指示に徹しようとプレーした。それが、結果的に多くのチャンスを作ることになり、4点という得点に結びついたのである。
だが90分間を通して、サッカーの内容が良かったわけではない。
特に序盤は、驚くほど出来が悪かった。