日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
セルビア戦でついにコンセプト崩壊。
岡田ジャパンに闘志は残っているか?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byToshiya Kondo
posted2010/04/09 12:30
岡田ジャパンのボールポゼッション率は70%を超えた。
あのバルセロナでもなかなかお目にかかれない驚くべき数字はゲームを支配していたことを示しているわけではない。むしろ皮肉にも岡田ジャパンの「不甲斐なさ」を証明している。ボールを持たせたところで怖くない――。リザルトからはセルビアのあざけりが聞こえてくるようだった。
セルビアは国内リーグの選手を集めた2軍チームとはいえ、言うまでもなく欧州予選でフランスを抑えてトップで通過した強豪だ。この試合は本大会メンバーに滑り込むためのアピールの場であり、彼らのモチベーションは極めて高かった。多少前がかりになるかと思いきや、彼らは日本をなめてはいなかった。それを証拠にアジリティーを活かす日本の素早い攻撃を警戒し、中盤でつくったブロックを崩さずに守ってきた。
先制点をもぎ取ると、徹底して引いて、裏のスペースを消し去ってしまう。先発の平均サイズは岡田ジャパンよりひと回りどころかふた回りも大きい187cm、79.8kg。高くて厚い壁のまわりをパスで回させておいて、縦に入ってきたところを叩きつぶす。打開されない限り、このやり方を継続すればいいだけのこと。日本は14本のシュートを放ったが、決定機は数えるほどだった。最初は緊張に満ちていたセルビア人の表情も、時間が経つにつれて余裕が窺えるようになった。
素早いパスワークと攻守の切り替えが消滅した岡田ジャパン。
この日の岡田ジャパンは単に攻撃が空回りしたという話では済まない、根深い問題を露呈した。攻撃のベクトルが前に向かない状況はこれまでもあった。だが、最後のところで詰めが甘いというならまだしも、素早いパスワークによる連動したスピーディーな攻撃という日本の持ち味自体があまり見られなかったのだ。積み上げてきたコンセプトに加えて個の応用力(ドリブルなどの仕掛け)でどこまで戦えるかというのが試合のポイントだったはずが、「攻」だけでなく「守」のコンセプトまで揺らいでしまっているというのが試合後の率直な感想だった。
多いタッチ数で攻撃を組み立てる以上、ミスしてしまえばカウンターを受ける。しかし、ミスをしないことなどあり得ない。そのために岡田ジャパンは攻守の切り替え、ポジショニングを徹底してきたのではなかったか。そのうえパスミスも随分と多かった。
最初の失点の責任はパスが出されたところで対応した栗原勇蔵にだけあるわけではない。興梠慎三のパスが奪われた時点で全員がアラート(相手を警戒する動き)の状態でなければならなかった。だがそのままパスをつながれてしまい、誰がチェックに行き、誰がカバーに回るかが不明確であった。2点目も、いとも簡単にサイドからクロスを上げられており、失点につながっている。また「攻」の部分で言うなら、あれだけ徹底したはずのニアへの速いクロス、それに飛び込む意識は一体、どこに行ってしまったのか。高い壁に向かってポーンと放り込むだけでは、跳ね返されて当然である。