青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
「石川遼への罵声」報道の真相。
選手と観客が共有すべきマナーとは?
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byUS PGA TOUR/getty images
posted2012/01/19 11:50
第2ラウンドをイーブンパーの70でまわった石川。通算1オーバー、141のスコアで、通過ラインにわずか2打足りず、予選落ちを喫した
日本ツアーでもおなじみの“だるまさんがころんだ”。
もっとも日本ツアーにおいてはまったく珍しいことではなく、むしろ日常の風景である。練習日やプロアマ戦にギャラリーが入れるいくつかの試合では、写真撮影も米ツアーと同じように許可されている。
その時も、石川の組には運営スタッフや学生バイトたちがびっちりとついて、ギャラリーに目を光らせていた。ギャラリーが動いていない状況であっても一打も欠かすことなく「プレー入ります。止まってください」と繰り返し、選手の視野とは全く関係ないであろう場所まで動きを止めさせていた。コース上で“だるまさんがころんだ”をさせられているかのようである。
それだけやってもギャラリーのカメラは時々暴走してしまう。ハワイでもそうだった。
すると今度は石川の関係者が「プレー中はカメラ下ろしてください!」と悲痛な叫びを上げることになる。石川の父・勝美さんも腹立ちまぎれに「そっちのシャッター音もうるさいんだよ」とルールに則っているプロのカメラマンたちにまで食ってかかっていた。関係者らの行動はなにより、観客を喜ばせるためのより良いプレーのためなのであるが……ぎすぎすした物言いはどうしてもギャラリーを萎縮させ、現場にいらぬ緊張感を走らせてしまうことになる。石川の練習ラウンドはいつしかぴりぴりとした空気を漂わせるものになっていた。
「ファンのモラルに期待するしかない」と関係者は言うが……。
米ツアーでは昨年3月のホンダクラシックから場内にモバイルデバイスを持ち込めるようになった。通話は決められたエリアで行い、メールやインターネットなどは選手から離れた場所で行うことが前提である。もちろんこれは本戦期間中の話で、練習ラウンドやプロアマ戦はギャラリーの写真撮影は全面的に認められている。
果たして米ツアーで同じようなトラブルは起きていないのだろうか。同ツアー広報のジョン・ブッシュ氏はこう言う。
「もちろんギャラリーのカメラ全てをコントロールするのは難しい。試合中もさっと取り出して撮影するギャラリーはいくらでもいるからね。それを防ぐためにたくさんのスタッフを配置しているし、彼らがきちんと仕事をしてくれているはずだ。タイガーのような人気選手なら係員の人数ももっと増やして対応する。今のところ選手から目立った不満の声は聞いていないし、練習日の撮影に関してもこちらでわざわざ注意を喚起することはない。選手にいいプレーをしてほしいと思うなら、スイング中にシャッターを切ることもないだろう。そこはファンのモラルに期待するしかないね」