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マネーが変えるサッカー界の勢力図。
中国が日本を買い占める日は来るか。 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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photograph byKYODO

posted2012/01/04 10:31

マネーが変えるサッカー界の勢力図。中国が日本を買い占める日は来るか。<Number Web> photograph by KYODO

中国で開かれた、クラブの監督就任記者会見で自身の名前が入ったユニフォームを披露した岡田武史氏

マンUの関係者も呆れた、中国のコピー商品事情。

 他方、八百長や買収などの不正疑惑、サポーター同士の暴力沙汰等々、昔から懸案とされてきた事柄も多い。クラブやリーグ運営の合理化、あるいはサッカー界全体の真の近代化を図るためには、ゆくゆくは商慣習そのものの改善も必要になるかもしれない。数年前に中国ツアーを行ったマンUの関係者は、こんなふうにこぼしていた。

「スタジアムが真っ赤に染まっているんだ。さぞかしシャツが売れたと思いきや、実入りはさっぱりだった。要はほとんどがコピー商品だったというわけさ」

Jリーグのバブルがはじけると、マネーは別の国へと流れていった。

 ただし中国の現象が、日本サッカー界にまったく影響を及ぼさないわけではない。懸念される影響の一つは、移籍市場の高騰と選手獲得競争の激化だ。

 '93年にJリーグが発足してから暫くの間、日本では海外から来た一流選手のプレーをじかに見ることができた。これはファンの獲得に役立っただけでなく、日本人選手の意識とスキルを高めるのにも貢献した。

 だがサッカーバブルが弾けると同時に大物の来日は激減。この間、彼らは新興のオーストラリアAリーグに吸い寄せられた。そして今、中国のスーパーリーグがAリーグに取って代わろうとしている。仮に中国サッカーの活性化がJリーグや日本代表の地位の低下にはすぐに直結しないとしても、有名所は中国へと流れていくだろう(中国代表チームは既にホセ・カマーチョを手にしている)。それはJリーグの選手や観客にとって、「世界」に直接触れる機会が減ることを意味する。

もしも第一線のJリーガーが中国のクラブに引き抜かれたら?

 二つ目の懸念は人材流出に拍車がかかることだ。

 杭州緑城の監督になることが決まった際、岡田武史氏は

「日本代表はアジアでの公式戦がどうしても多い。日本代表の成長が将来頭打ちになるのを避けるためにも、アジアのサッカーのレベルアップは必要になる。そのために私は中国に行くのだ」という趣旨のコメントを口にした。

 個人的には発言の真意を訝るつもりなど毛頭ないし、おそらく今回の決断には岡田氏なりの深慮遠謀が働いていると思いたい。だが海外のメディアは「中国の富豪が年俸3億円――Jリーグのクラブが太刀打ちできないギャラを提示して、岡田監督を日本から奪った」という捉え方をしている。ガンバの遠藤などを呼び寄せる案は断念したようだが、第一線のJリーガーが引き抜かれるようなケースが出てくれば、懸念は一層強まっていくはずだ。

【次ページ】 では、日本サッカー界は何をするべきか?

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