濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“格闘ネイティブ”世代が台頭!
日本の格闘界は、どう変わるのか?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2011/12/31 08:01
2011年12月9日に行なわれた、Krush YOUTH GP2011で王者となった野杁正明。彼は2009年のK-1甲子園で高校1年生でチャンピオンとなり、一躍注目を浴びた、若手でも輝かしい経歴の持ち主である。写真は2011年6月25日のK-1 WORLD MAX 2011でのもの
昨今の日本格闘技界を見渡すと、ある傾向に気付く。二十歳前後に、飛び抜けた才能が集中しているのだ。
総合格闘技の老舗・修斗でデビューから6連勝、かつ5連続KO勝利中の堀口恭司が21歳。立ち技イベントKrushの55kg級初代王者となった瀧谷渉太は22歳。同じくKrushの22歳以下トーナメント『Krush Youth GP』で優勝したのは18歳の高校3年生・野杁正明だった。彼はK-1の63kg級トーナメントでもベスト4に進出している。野杁に勝ち、優勝を果たした久保優太もまだ24歳だ。
シュートボクシングの女子トーナメント『Girls S-cup』を制した神村エリカは19歳で、その神村を下してRISE女子王者となったRENAは20歳。
幼少期から鍛錬されてきた格闘技の“うまさ”。
彼らに共通しているのは、どんなファイトスタイルであれ一様に“うまさ”を持っていることだ。完成度が高い、と言い換えてもいい。“ノーガードの打ち合いで勝っても負けてもKO”や“パワーでねじ伏せる”といったタイプは皆無。アグレッシブなKOパンチャーの堀口も「僕の闘いには理論の裏付けがあるんです」と言う。
彼らの“うまさ”、その背景にあるのは、長いキャリアだ。この年齢で活躍しているのだから当然だが、彼らは幼い頃に格闘技を習い始めている。石川遼がゴルフで、浅田真央がフィギュアスケートでそうしてきたように、彼らは格闘技に打ち込んできたのである。
以前なら、「他のスポーツをやっていたけど、大学生になったのをきっかけに格闘技を始めてみた」、「スポーツ経験なし。ダイエット目的で入ったジムで格闘技にはまってしまい、夢にも思わなかったプロデビュー」という選手も珍しくなかったが、今では格闘技も野球やサッカー、ゴルフと似た状況になっているということだ。
ジュニア部門を登竜門とするステップアップ。
たとえば、18歳で格闘技を始めた選手が30歳で円熟期を迎えたとする。8歳で始めた20歳の選手は、実はそんな“ベテラン”と同じだけの格闘キャリアを持っていることになるのだ。
アマチュアのジュニア部門とはいえ、試合経験も多い。空手大会のキッズ部門から少年の部を経て、K-1甲子園、あるいはプロへというステップも確立されている。
彼らには、格闘技の基礎や勝負勘が掛け算の九九と同レベルで染み込んでいるのだろう。いわばデジタルネイティブならぬ“格闘ネイティブ”である。